POPs規制とは何か――なぜ「分解されない化学物質」は世界からなくさなければならないのか【完全保存版】

化学物質には、使用をやめれば問題が小さくなっていくものがあります。

しかし、中にはそう簡単には消えてくれない物質があります。

環境中で分解されにくい。

生物の体内に蓄積する。

大気や水、生物などを通じて、使用した場所から遠く離れた地域まで移動する。

そして、人の健康や生態系に悪影響を及ぼす。

こうした性質を持つ化学物質が、POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)です。

POPsの問題が特別なのは、「その国で使わなければ解決する」とは限らないことです。

ある国で放出された物質が国境を越えて移動し、何年、何十年と環境中に残る可能性がある。

だからPOPsは、一国の化学物質規制だけでは十分に対応できませんでした。

この問題に世界全体で対応するために生まれたのが、2001年に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」です。

当初の対象はPCB、DDT、ダイオキシンなど12物質・物質群。

いわゆる「Dirty Dozen」から始まりました。

しかし、それで終わったわけではありません。

PFOS、PFOA、PFHxS、臭素系難燃剤、塩素化パラフィンなど、産業や製品の中で使われてきた化学物質が、その後次々とPOPsの対象になってきました。

そして2025年のCOP12では、クロルピリホス、MCCP(中鎖塩素化パラフィン)、長鎖PFCA類について、新たに条約附属書Aへの追加が決定されています。

POPs規制は、DDTやPCBを扱う「昔の環境規制」ではありません。

2026年現在も対象が更新され続ける、現在進行形の世界規制です。

WHAT ARE POPs?

POPsとは――「毒性がある」だけではPOPsではない

POPsはPersistent Organic Pollutantsの略です。

日本語では「残留性有機汚染物質」と呼ばれます。

POPsを理解するうえで重要なのは、単に「毒性が強い物質」という意味ではないことです。

ストックホルム条約では、新たな物質をPOPsとして検討する際、附属書Dに基づいて主に次の性質を評価します。

PERSISTENCE

残留性

環境中で分解されにくく、長期間残る。

BIOACCUMULATION

生物蓄積性

生物の体内に取り込まれ、蓄積する。

LONG-RANGE TRANSPORT

長距離環境移動性

発生源から遠く離れた場所まで移動する可能性がある。

ADVERSE EFFECTS

有害影響

人の健康や環境に悪影響を及ぼす。

つまり、

有害だからPOPsになるのではありません。

有害性に加えて、「残る」「蓄積する」「遠くまで移動する」という性質が組み合わさることで、局地的な化学物質問題が地球規模の問題になります。

ここがPOPs規制の出発点です。

LONG-RANGE ENVIRONMENTAL TRANSPORT

なぜ「遠くまで移動する」ことが問題なのか

POPsの特徴の中でも、ストックホルム条約が必要になった理由を最もよく表しているのが長距離環境移動性です。

通常、ある工場から汚染物質が排出されれば、その工場や周辺地域で対策することを考えます。

ところがPOPsは、それだけでは済まない場合があります。

大気
河川
海流
生物

こうした経路を通じて、発生源から遠く離れた場所へ移動する可能性があります。

つまり、POPsをほとんど製造・使用していない地域であっても、その影響から完全に切り離されるとは限りません。

自国で禁止するだけでは、自国を守れない。

他国での製造や使用、排出についても減らしていかなければ、地球規模の汚染を防ぐことができない。

だからPOPsには国際的な法的枠組みが必要になったのです。

DIRTY DOZEN

12の化学物質から始まった「Dirty Dozen」

ストックホルム条約の歴史は、最初から現在のような多数の物質を対象としていたわけではありません。

1995年、国連環境計画(UNEP)は、国際的な対応が必要と考えられる最初の12のPOPsについて評価を進めることを決定しました。

その後の国際交渉を経て、2001年5月22日、スウェーデンのストックホルムで条約が採択されます。

そして2004年5月17日に発効しました。

最初に対象となった12物質・物質群は、後に「Dirty Dozen」と呼ばれるようになります。

DDT
PCB
ダイオキシン
フラン
アルドリン
ディルドリン
エンドリン
クロルデン
ヘプタクロル
ヘキサクロロベンゼン
マイレックス
トキサフェン

農薬。

電気設備などに利用された工業化学品。

燃焼などによって非意図的に生成される物質。

用途も発生経路も異なります。

POPs条約は、世界に残り続けるという共通した性質を持つ化学物質を、用途を越えて管理する条約として始まりました。

DDT

DDTはなぜ「完全禁止」ではないのか

POPs条約を理解するとき、DDTは非常に興味深い例です。

DDTはかつて世界各地で広く使用された殺虫剤です。

POPsとして問題となる性質を持つ一方、マラリアなどを媒介する蚊の防除という公衆衛生上の役割もありました。

そのためストックホルム条約では、DDTを単純にすべて禁止する仕組みにはしていません。

一定の条件の下で、疾病媒介生物の防除などの「acceptable purpose(認められる目的)」を設けています。

POPs条約は「危険だから全部即時禁止」という単純な制度ではありません。

物質の性質。

用途。

代替技術。

社会的必要性。

こうした事情も考慮しながら、世界全体として製造・使用・排出を廃絶または削減していく制度です。

ANNEX A / B / C

Annex A・B・C――POPsは三つの方法で管理される

ストックホルム条約を理解するうえで最も重要なのが、附属書A、B、Cです。

ANNEX A

廃絶

原則として製造・使用を廃絶する方向。

ANNEX B

制限

製造・使用を特定の目的や条件に限定。

ANNEX C

非意図的生成物

放出を削減し、可能な場合には最終的な廃絶を目指す。

Annex Aに掲載されたPOPsについては、原則として製造・使用を廃絶するための措置が求められます。ただし、物質によって特定用途の適用除外が設定される場合があります。

Annex Bでは、製造・使用を特定の目的や条件に制限します。代表的な例がDDTです。

Annex Cでは、ダイオキシンやフランのように、燃焼や工業プロセスなどの過程で非意図的に生成されるPOPsの放出を削減し、可能な場合には最終的な廃絶を目指します。

Annex A=廃絶
Annex B=制限
Annex C=非意図的生成・放出の削減

POPs条約は、化学物質を一律に同じ方法で管理するのではなく、どのように作られ、使われ、発生するのかまで考えて制度を設計しています。

A LIVING LIST

「POPsリスト」は完成しない

2001年に条約が採択された時点では、対象は最初の12物質・物質群でした。

しかし科学的知見は変わります。

新しい化学物質が開発されます。

環境モニタリング技術も進歩します。

以前は十分に分からなかった環境残留性や生物蓄積性が、後から明らかになることもあります。

そのためストックホルム条約には、新たな物質を追加する仕組みがあります。

締約国から候補物質が提案されると、POPRC(Persistent Organic Pollutants Review Committee:残留性有機汚染物質検討委員会)が評価します。

候補物質の提案

附属書Dのスクリーニング基準

リスクプロファイル

リスク管理評価

締約国会議(COP)が附属書への追加を判断

まず確認されるのは、

残留性。

生物蓄積性。

長距離環境移動性。

有害影響。

POPs条約は、2001年に危険な物質のリストを作って終わった条約ではありません。

新しい科学的知見を使って、対象物質を追加し続ける仕組みそのものなのです。

FROM DDT TO PFAS

DDT・PCBからPFASへ――POPsの姿は変わった

POPsの歴史を見ると、規制対象の変化がよく分かります。

初期のPOPsでは、DDTなどの農薬、PCBなどの工業化学品、ダイオキシンなどの非意図的生成物が象徴的でした。

その後、製品に使われる工業化学物質が次々に加わっていきます。

臭素系難燃剤
塩素化パラフィン
PFOS
PFOA
PFHxS

ここで非常に重要なのは、

PFAS=POPsではない

ということです。

PFASは非常に多くの物質を含む大きな化学物質群です。

そのすべてがストックホルム条約のPOPsとして掲載されているわけではありません。

POPsとして国際的に追加されるには、条約の評価プロセスを経て、残留性、生物蓄積性、長距離環境移動性、有害影響などを踏まえ、世界的な対策が必要であると判断される必要があります。

したがって、「PFAS規制」と「POPs規制」は重なる部分があるが、同じものではないと理解する必要があります。

COP12 / 2025

2025年――POPsはさらに広がった

POPsが現在進行形の規制であることを象徴するのが、2025年のストックホルム条約第12回締約国会議、COP12です。

2025年4月28日から5月9日にジュネーブで開催されたCOP12では、三つの新しい化学物質・物質群を附属書Aへ追加することが決定されました。

クロルピリホス

殺虫剤として使用されてきた有機リン系化合物。

MCCP

Medium-Chain Chlorinated Paraffins。中鎖塩素化パラフィン。

長鎖PFCA類

その塩及び関連化合物を含むPFASの一群。

ここには、POPsの歴史を象徴する面白い構図があります。

2001年の条約は、DDTなどの農薬やPCBなどを中心とする12物質から始まりました。

それから約25年。

2025年になっても、新しい農薬と、製造業で利用されてきた工業化学物質、そしてPFASの一群が、新たなPOPsとして追加されている。

POPs問題は過去の公害問題ではありません。製品と化学物質が変われば、POPs規制も変わり続けるのです。

なお、COPで附属書への追加が決定された日と、各締約国について条約改正が法的に効力を持つ日、さらに各国・地域の国内法へ反映される時期は必ずしも同じではありません。2026年時点では、それぞれの発効状況と各国法への反映を分けて確認する必要があります。

EU POPs REGULATION

EU POPs規則――国際条約を「EU市場のルール」にする

ここから製造業の実務へ入ります。

ストックホルム条約は国際条約です。

しかし企業がEU市場で実際に確認するのは、EUの法制度です。

EU POPs REGULATION

Regulation (EU) 2019/1021 on persistent organic pollutants

EU POPs規則は、ストックホルム条約や長距離越境大気汚染条約議定書に基づくEUの義務を実施する制度です。

規則の目的には、

製造
上市
使用
放出
廃棄物

まで含まれています。

POPs規制は、「この物質を新しい製品に使ってはいけない」だけではありません。

すでに社会の中に存在しているPOPsをどう管理し、最終的に環境へ戻さないかまで考える制度なのです。

REACH vs POPs

REACHとPOPsは何が違うのか

EU化学物質規制を見ていると、ここで疑問が出ます。

「REACHがあるのに、なぜPOPs規則も必要なのか。」

両者は重なる部分がありますが、制度の出発点が違います。

REACH

EU市場における化学物質を広く管理する制度

POPs

国際的に廃絶・制限すべき残留性有機汚染物質を管理する制度

REACHには登録、評価、認可、制限などがあります。

一方POPs規則では、ストックホルム条約等の対象となる物質について、より強い廃絶・制限の方向性が取られます。

同じ物質がREACHの制限とPOPs規則の両方に関係することもあります。

「REACHを確認したからEU化学物質規制は終了」とは限りません。

POPs規則が別に適用されないかを確認する必要があります。

RoHS vs POPs

RoHSとも違う――「製品カテゴリー」で考えない

RoHSに慣れている企業ほど、POPsで注意したいことがあります。

RoHSは主に電気・電子機器を対象とした製品規制です。

そのため、「この製品はRoHS対象か」という入口から考えることができます。

POPs規則では、この考え方だけでは不十分です。

樹脂
ゴム
繊維
塗料
接着剤
潤滑剤
難燃材料
ケーブル
建材
自動車部品
再生材

POPs対応では、「自社製品は何の製品カテゴリーか」より、「自社製品・材料の中に対象POPsが存在し得るか」という視点が重要になります。

LEGACY PRODUCTS

なぜ古い製品まで問題になるのか

ここがPOPs規制の最も特徴的なところです。

ある化学物質が今日禁止されたとします。

新しい製品への使用をやめれば、将来市場へ出ていく量は減ります。

しかし過去に作られた製品はどうでしょうか。

建築物
変圧器
電気設備
自動車
家具
断熱材
プラスチック製品

長期間使用される製品の中には、過去に使用されたPOPsが残っている可能性があります。

さらに、その製品が廃棄される。

破砕される。

再生材になる。

別の製品へ再利用される。

すると、かつて使用されたPOPsが新しい製品や材料の流れへ戻ってくる可能性があります。

使用を禁止しても、物質そのものは社会からすぐには消えない。

POPsが「残留する」という性質は、自然環境だけの話ではありません。社会の中にある製品や廃棄物のストックにも関係する問題なのです。

CIRCULAR ECONOMY

POPs規制と「循環経済」の難しい関係

現在、世界では資源循環が重要な政策になっています。

廃棄物を減らす。

材料を再利用する。

再生材を使う。

製品寿命を延ばす。

環境政策として非常に重要です。

しかしPOPsの視点を入れると、一つの矛盾が見えてきます。

古い材料を循環させることで、過去に使用された有害物質まで循環させてしまわないか。

例えば、過去の製品に使われていた難燃剤などが、リサイクル工程を経て再生プラスチックへ移行する可能性があります。

資源としては循環させたい。

しかしPOPsは循環させたくない。

だからPOPs規制では、廃棄物についても特別な管理が必要になります。

EU POPs規則でも、POPsを含有・汚染された廃棄物について規定が設けられています。

循環経済とは、すべての物質を無条件に循環させることではありません。

資源は循環させる。

しかし、将来に残してはいけない化学物質は循環から取り除く。

POPs規制は、循環経済の「出口管理」を支える規制でもあるのです。

TESTING

POPs分析では「何を測るか」が変わり続ける

POPs対応では分析も重要な役割を持ちます。

しかし「POPs試験」という一つの固定された分析が存在するわけではありません。

化学構造
材料中での存在形態
濃度
分析方法
前処理
測定装置

対象物質によって、必要な分析は異なります。

さらにPOPsの対象物質自体が追加されていきます。

昨日まで管理対象ではなかった物質が、国際的な評価を経て新しいPOPsになることもあります。

「POPs試験を一度やったから終わり」という考え方では対応できません。

まず確認すべきなのは、

どの市場へ製品を出すのか

どのPOPs規制が適用されるのか

どの材料に対象物質が存在する可能性があるのか

サプライヤーからどの情報が得られるのか

過去の材料・再生材を使用していないか

そのうえで、必要な分析を選ぶという順番が重要です。

RISK-BASED TESTING

「全POPs分析」は本当に必要なのか

POPsの対象が増えてくると、「では全部測定すればいいのではないか」という考え方も出てきます。

しかし、実務では必ずしも合理的とは限りません。

農薬として使われてきた物質。

難燃剤。

界面活性剤関連物質。

塩素化パラフィン。

意図せず生成されるダイオキシン類。

物質によって使用用途や存在可能性が大きく異なります。

例えば電子部品と農産物では、想定すべきPOPsは同じではありません。

対象法規

× 製品用途

× 材料

× 過去の使用履歴

× サプライヤー情報

からリスクを考えることが重要です。

分析は、その判断を裏付けるための手段です。これはRoHSでもREACHでも共通しますが、POPsでは「古い材料」「再生材」「廃棄物」という時間軸が加わる点が特徴的です。

JAPAN

日本ではPOPs条約をどう実施しているのか

ストックホルム条約は世界共通の条約ですが、実際の規制は各締約国が国内制度を通じて実施します。

日本も締約国です。

国内では、化学物質審査規制法、農薬取締法、廃棄物関連制度、ダイオキシン類対策など、複数の制度を通じてPOPs条約上の義務に対応しています。

日本にも「POPs法」という一つの法律だけが存在するわけではありません。

条約で国際的な方向性が決まり、それを国内の複数の法制度で実施する構造です。

また日本は、条約第7条に基づく国内実施計画を策定・改定しています。

直近では2025年3月に国内実施計画が改定されました。

POPsが追加されれば、各国は国内制度や実施計画を更新していく必要があります。この意味でも、POPs規制は固定された制度ではありません。

2001 → 2026

2001年と2026年――POPsはどう変わったのか

視点 2001年 2026年
出発点 Dirty Dozenと呼ばれる12物質・物質群 多数の追加POPsを含む制度へ
象徴的物質 DDT、PCB、ダイオキシン等 PFOS、PFOA、PFHxS、難燃剤、塩素化パラフィン等へ拡大
主なイメージ 農薬・PCB・非意図的生成物 製品含有化学物質まで広く関係
管理対象 製造・使用・排出 製造・使用・排出+製品・在庫・廃棄物・再生材
科学 12物質からスタート POPRCによる継続的な追加評価
企業実務 既知のPOPsへの対応 新規追加物質を継続的に監視
資源循環 廃棄物の適正処理 循環経済からPOPsをどう排除するかがより重要

この25年間で変わったのは、単純に対象物質の数だけではありません。POPs規制は、「危険な農薬やPCBをなくす規制」から、「製品・材料・廃棄物の中を循環する残留性化学物質を世界規模で管理する仕組み」へ広がったと見ることができます。

2026

2026年――EUではCOP12の決定が法制度へ移り始めている

そして2026年、POPs規制は再び動いています。

2025年のCOP12で新たなPOPsの追加が決定されたことを受け、各国・地域では国内制度への反映が進みます。

EUでは2026年6月30日、欧州委員会がクロルピリホスをRegulation (EU) 2019/1021のAnnex Iへ追加するための委任規則を採択しました。

COPで決定

条約上の発効

EU法・各国法への反映

企業実務

という時間差があることが重要です。

ニュースで「POPsに追加された」と知っただけでは、企業がいつから何をしなければならないかまでは分かりません。

条約上のステータス

EU POPs規則への反映

適用除外

意図しない微量汚染物質としての限度

廃棄物に関する基準

POPs対応では、「物質名を知っていること」と「規制要求を理解していること」は別物です。

TICNOLOGY JAPAN VIEW

POPsが教えているのは「化学物質には過去がある」ということ

POPs規制を他の化学物質規制と比べると、非常に特徴的な点があります。

時間です。

新しい化学物質規制ができると、企業は通常、

これから何を使うか。

これから何を製造するか。

これから何を市場へ出すか。

を考えます。

しかしPOPsでは、それだけでは足りません。

過去に何を使っていたか。

という問いが加わります。

20年前に製造された設備

古い建築材料

長期間使用される製品

倉庫に残る在庫

過去の製品から作られた再生材

廃棄物

POPsは環境中で残り続けるだけではありません。

人間社会が作った製品や材料の中にも残り続ける可能性があります。

だからPOPs規制では、

「今日から使わない」ことと、「昨日まで使っていたものをどうするか」の両方を考えなければなりません。

ここにTestingの役割があります。

材料中に対象POPsが存在するのか。

再生材に過去のPOPsが持ち込まれていないか。

サプライヤー情報だけで十分に判断できるのか。

必要な場合には分析によって確認する。

しかし分析だけでも終わりません。

どの物質を調べるべきかを法規制から判断し、サプライチェーン情報と組み合わせ、製品・材料・廃棄物のどこにリスクがあるのかを見極める必要があります。

POPs規制が世界に突きつけた問いは、単純です。

「便利だった化学物質を、使い終わった後にどうするのか。」

PCBも、DDTも、難燃剤も、PFASも、使われた当時にはそれぞれ理由がありました。

性能があった。

耐久性があった。

製品を安全にした。

農業や公衆衛生に役立った。

しかし化学物質の価値は、使用している瞬間の性能だけでは評価できません。

その物質が使用後にどこへ行くのか。

環境中で分解されるのか。

生物に蓄積するのか。

遠くまで移動するのか。

そして何十年後まで残るのか。

そこまで含めて考える必要があります。

ストックホルム条約が2001年に12のPOPsから始まり、2026年になっても新しい物質を追加し続けている理由は、ここにあります。

POPs規制とは、「有害物質を禁止する規制」であると同時に、化学物質のライフサイクルを“使用後の未来”まで考える規制なのです。

本記事について

本記事は、2026年9月時点で確認できるストックホルム条約、EU POPs規則、日本の国内実施計画等の公開情報をもとに、POPs規制の制度構造と企業実務上の考え方を整理したものです。

POPsの附属書追加決定、条約上の発効、EU法や各国法への反映、適用除外、微量汚染物質に関する限度、廃棄物基準等は、それぞれ適用時期や内容が異なる場合があります。個別製品については、必ず最新の法令および公的情報をご確認ください。

情報基準日:2026年9月

主な参考資料

Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants

Stockholm Convention Secretariat, The New POPs / COP12 Decisions

European Parliament and Council, Regulation (EU) 2019/1021 on persistent organic pollutants

Ministry of the Environment, Japan, Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants

Ministry of the Environment, Japan, National Implementation Plan under Article 7 of the Stockholm Convention

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