世界の化学物質規制・保存版|製造業が押さえておきたい主要制度を世界横断で整理

海外へ製品を販売すると、「REACH」「RoHS」「TSCA」「Proposition 65」「K-REACH」「中国RoHS」など、さまざまな規制名に出会います。

初めて担当する人にとって難しいのは、規制の内容以前に、それぞれが何を規制していて、どう違うのかが分かりにくいことではないでしょうか。

REACHとRoHSは同じEUの制度ですが、目的も対象も違います。日本のJ-MossとEU RoHSも似て見えますが、同じ制度ではありません。米国では連邦法のTSCAに加えて、カリフォルニア州のProposition 65のような州独自制度も存在します。

本稿では、世界の主要な化学物質規制を同じ視点で並べ、「この規制は何のためにあるのか」「何を対象としているのか」「企業には何が求められるのか」を短時間で確認できるよう整理します。

GLOBAL REGULATION INDEX

世界の化学物質規制 一覧

国・地域名、または規制名を選ぶと該当箇所へ移動できます。

国・地域 主な制度 主なポイント
🌐 国際 GHSストックホルム条約ロッテルダム条約水俣条約バーゼル条約 危険有害性情報、POPs、水銀、有害化学物質貿易、有害廃棄物
🇪🇺 EU REACHRoHSCLPPOPs規則 登録・評価・認可・制限、10物質、分類表示、POPs
🇯🇵 日本 化審法化管法安衛法J-Moss 新規化学物質、PRTR・SDS、労働安全、電気電子機器の含有表示
🇨🇳 中国 新化学物質環境管理登記弁法中国RoHSVOC関連強制国家標準 新規化学物質、電器電子製品10物質、VOC
🇰🇷 韓国 K-REACH化学物質管理法韓国RoHS 登録・評価、化学物質取扱い、電気電子製品の有害物質
🇹🇼 台湾 毒性及び懸念化学物質管理法新規・既有化学物質登録台湾RoHS 毒性・懸念物質、化学物質登録、電気電子製品
🇺🇸 米国 TSCAHazComProposition 65州別化学物質規制 工業化学物質、職場安全、ばく露警告、州独自規制
🇨🇦 カナダ CEPAWHMIS 化学物質・環境リスク、インベントリ、職場のSDS・ラベル
🇬🇧 英国 UK REACHGB CLPUK RoHS EU離脱後の化学物質登録、分類表示、電気電子機器規制
🇦🇺 豪州 AICISWHS 工業化学品の導入、職場での危険有害化学品管理
🇳🇿 NZ Hazardous Substances制度 危険有害物質、承認、分類、ラベル
🇮🇳 インド インドRoHS危険化学物質関連制度 電気電子機器、危険化学物質、製造・保管・輸入
🌏 ASEAN タイベトナムマレーシアシンガポールフィリピン インベントリ、輸入、届出、許可、GHS・SDS
🇹🇷 トルコ KKDIKSEA 登録・評価・認可・制限、分類・表示
🌐 EAEU 化学品安全技術規則 域内共通制度、化学品安全、移行措置
🌍 中東 サウジアラビアUAE 輸入、危険物、製品規制、適合性評価

※本一覧は主要制度の位置付けを把握するためのものです。実際の適用は、対象製品、物質、用途、数量、濃度、輸出入形態などによって異なります。

FIRST PRINCIPLE

まず知っておきたい「化学物質規制」は一種類ではない

世界の制度を理解するときは、規制名を覚える前に「何を管理する制度なのか」を見ると整理しやすくなります。

規制の考え方 何を管理するのか 代表例
化学物質そのもの 製造・輸入・登録・リスク REACH、TSCA、化審法、K-REACH
製品中の化学物質 製品への特定物質の含有 EU RoHS、中国RoHS
危険有害性情報 分類・ラベル・SDS GHS、CLP、HazCom
環境への排出 排出量・移動量 PRTR、EPCRA
特定有害物質 POPs、水銀など ストックホルム条約、水俣条約
消費者への情報 警告・情報提供 California Proposition 65
労働者保護 職場での化学物質管理 日本の安衛法、米国HazCom
REACHとRoHSは、同じ種類の規制ではありません。 一つの製品に、化学物質登録、製品含有制限、SDS、表示など複数の制度が同時に関係する場合があります。
🌐
GLOBAL

まず世界共通の土台を見る

GHS

化学品の危険有害性を共通言語にする

対象:化学品の分類・表示・SDS

GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)は、化学品の危険有害性を分類し、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、SDSなどによって伝えるための国際的な枠組みです。

GHS自体が世界共通の単一法令として企業へ直接適用されるわけではなく、各国・地域が国内制度へ取り込んで運用します。そのため、採用版や具体的な要求には地域差があります。

POINT|分類・ラベル・絵表示・SDS

ストックホルム条約

POPsを世界規模で廃絶・制限する

対象:残留性有機汚染物質(POPs)

環境中に長期間残留し、生物に蓄積し、長距離を移動するなどの性質を持つPOPs(Persistent Organic Pollutants)を国際的に管理する条約です。

対象物質について、製造・使用の廃絶、制限、非意図的生成の削減などを求め、締約国が国内法へ反映します。

POINT|POPs・廃絶・制限・国際条約

ロッテルダム条約

有害化学物質の国際取引を管理する

対象:特定の有害化学物質・農薬の国際貿易

国際取引される特定の有害化学物質について、輸入国が事前に情報を受け、輸入意思を示せるPIC(Prior Informed Consent:事前の情報に基づく同意)手続きを設けています。

農薬も対象に含まれますが、工業用化学物質の国際取引にも関係するため、世界の化学物質管理を理解するうえで重要です。

POINT|国際貿易・事前同意・情報共有

水俣条約

水銀をライフサイクル全体で管理する

対象:水銀・水銀化合物・水銀使用製品

水銀による人の健康と環境への影響を低減するため、水銀の供給、貿易、製品、製造工程、排出、廃棄物などを国際的に管理する条約です。

単純な「水銀含有禁止」だけではなく、水銀のライフサイクルを広く対象としていることが特徴です。

POINT|水銀・製品・工程・排出・廃棄

バーゼル条約

有害廃棄物の国境移動を管理する

対象:有害廃棄物等の越境移動・処分

有害廃棄物などの国境を越える移動と処分を管理する国際条約です。

電子廃棄物、使用済み製品、リサイクル原料などの国際移動を考える場合に重要となります。

POINT|廃棄物・越境移動・輸出入・適正処理
🇪🇺
EUROPEAN UNION

欧州連合(EU)

EUでは、REACHだけでなく、CLP、RoHS、POPs規則など目的の異なる制度が重なって化学物質を管理しています。

REACH

EU化学物質管理の中核

対象:化学物質・混合物・一定の成形品

REACHは、Registration(登録)、Evaluation(評価)、Authorisation(認可)、Restriction(制限)を柱とするEUの包括的な化学物質規則です。

原則として年間1トン以上製造・輸入される物質の登録に加え、SVHC(高懸念物質)の情報伝達、特定物質の認可、用途や製品を含む制限など複数の仕組みを持っています。単純な「禁止物質リスト」ではありません。

POINT|登録・評価・認可・制限・SVHC

EU RoHS

電気・電子機器の10物質を制限

対象:電気・電子機器

電気・電子機器に含まれる鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、DEHP、BBP、DBP、DIBPの10物質を制限する制度です。

10 RESTRICTED SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE / DEHP / BBP / DBP / DIBP

最大許容濃度は均質材料単位で、カドミウムが原則0.01wt%、その他9物質が原則0.1wt%です。用途ごとに適用除外が存在するため、「検出された=直ちに不適合」とは限りません。

POINT|10物質・均質材料・閾値・適用除外

CLP

危険有害性を分類し、ラベルで伝える

対象:化学物質・混合物

CLP(Classification, Labelling and Packaging)は、化学品の分類、表示、包装を定めるEUの制度です。

REACHが化学物質の登録やリスク管理を広く扱うのに対し、CLPは「その化学品にどのような危険有害性があり、それをどう分類・表示するか」を中心にしています。

POINT|分類・ラベル・包装・GHS

EU POPs規則

POPs条約をEU域内で実施

対象:POPs対象物質

ストックホルム条約等の国際的な義務をEU域内で実施するため、POPsの製造、上市、使用、廃棄物管理などを規定します。

REACHとは別の法体系であり、対象物質についてはPOPs規則の濃度限度や廃棄物要求などを個別に確認する必要があります。

POINT|POPs・禁止/制限・廃棄物・国際条約
🇯🇵
JAPAN

日本

化審法

化学物質の製造・輸入を入口から管理

対象:工業用化学物質

化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)は、新規化学物質の製造・輸入前の審査を基本とし、既存化学物質についても性状やリスクに応じた評価・管理を行います。

第一種特定化学物質などについては製造・輸入・使用等に厳しい規制が設けられています。POPs条約による物質追加も国内制度へ反映されます。

POINT|新規化学物質・事前審査・製造輸入・特定化学物質

化管法

PRTRとSDSで化学物質を「見える化」

対象:指定化学物質

化管法は、PRTR制度とSDS制度を二つの柱としています。

PRTRでは対象化学物質の環境への排出量や事業所外への移動量を把握・届出し、SDS制度では対象化学品を事業者間で譲渡・提供する際に、その性状や取扱情報を伝達します。

POINT|PRTR・SDS・排出量・情報伝達

労働安全衛生法

働く人を化学物質から守る

対象:職場で取り扱う化学物質

労働者の安全と健康を守る観点から、危険・有害な化学物質についてラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントなどを求めます。

化審法が主として環境を経由した人・生態系への影響を扱うのに対し、安衛法では職場で化学物質を扱う人の安全・健康が重要な視点になります。

POINT|労働者・ラベル・SDS・リスクアセスメント

J-Moss

電気・電子機器の6物質を表示管理

対象:特定の電気・電子機器

JIS C 0950に基づき、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEの6物質について、電気・電子機器における含有表示を定めた仕組みです。

6 TARGET SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE

EU RoHSと同じ6物質が基礎にあるため混同されやすいものの、EU RoHSと日本のJ-Mossは法的な仕組みも対象製品も同一ではありません。

POINT|6物質・電気電子機器・含有表示・JIS C 0950
🇨🇳
CHINA

中国

中国では、新規化学物質そのものを管理する制度と、電器電子製品に含まれる有害物質を管理する中国RoHS、さらにVOCを対象とした製品別の強制国家標準など、目的の異なる制度が並行して運用されています。

新化学物質環境管理登記弁法

中国で新しい化学物質を製造・輸入する前に管理

対象:IECSCに収載されていない新規化学物質

中国で新規化学物質を製造または輸入する際の環境管理制度です。既存化学物質かどうかを判断する基準となるのが、IECSC(中国現有化学物質名録)です。

IECSCに収載されていない物質については、製造・輸入量や物質特性などに応じて、通常登記、簡易登記、備案などの手続きを確認する必要があります。中国市場へ化学品を投入する際は、まずインベントリ収載状況を確認することが出発点となります。

POINT|IECSC・新規化学物質・製造輸入・登記/備案

中国RoHS

電器電子製品の10物質を管理

対象:電器電子製品

中国RoHSは、電器電子製品に含まれる有害物質の使用を管理する制度です。従来の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEの6物質に、DEHP、BBP、DBP、DIBPの4種類のフタル酸エステルが追加され、10物質の管理体系となっています。

10 CONTROLLED SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE / DEHP / BBP / DBP / DIBP

EU RoHSと対象物質が似ていても、制度設計は同一ではありません。中国では有害物質の表示や環境保護使用期限などの情報開示に加え、対象となる製品について適合管理の仕組みを確認する必要があります。

POINT|10物質・電器電子製品・表示・適合管理

VOC関連強制国家標準

塗料・接着剤・インキなどのVOC含有量を管理

対象:塗料、接着剤、インキ、洗浄剤など

中国では、大気汚染対策の一環として、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を含む製品について、製品群ごとの強制国家標準が整備されています。

規制値や試験方法は製品カテゴリーによって異なるため、「中国VOC規制」という一つの共通基準で判断するのではなく、塗料、接着剤、インキ、洗浄剤など、自社製品に対応する国家標準を特定する必要があります。

POINT|VOC・塗料・接着剤・インキ・製品別国家標準
🇰🇷
SOUTH KOREA

韓国

韓国では、化学物質の登録・評価を担うK-REACHと、化学物質の取扱いや事故予防を担う化学物質管理法が大きな柱です。電気・電子製品については、有害物質の使用制限を含む別の製品規制も存在します。

K-REACH

化学物質の登録・評価を行う韓国の中核制度

対象:既存化学物質・新規化学物質など

K-REACHは「化学物質の登録及び評価等に関する法律」の通称で、化学物質の登録、届出、評価、リスク管理などを定める韓国の主要制度です。

EU REACHと名称や考え方に共通点はありますが、登録対象、数量帯、期限、手続きなどは韓国独自です。EU向けにREACH対応を行っている企業でも、韓国向けにはK-REACHの要求を別途確認する必要があります。

POINT|登録・届出・評価・既存化学物質・新規化学物質

化学物質管理法

化学物質の取扱いと事故予防を管理

対象:有害化学物質の取扱い・施設など

化学物質管理法は、化学物質による国民の健康・環境への危害を防ぎ、化学事故を予防するため、化学物質の取扱い、施設、営業、事故対応などを管理する制度です。

K-REACHが主として化学物質の登録・評価を扱うのに対し、化学物質管理法は実際の取扱いや事業所管理に重点があります。同じ化学物質でも、両制度を別の角度から確認する必要があります。

POINT|取扱い・有害化学物質・施設・化学事故

韓国RoHS

電気・電子製品と自動車の有害物質を管理

対象:電気・電子製品、自動車など

韓国では、電気・電子製品や自動車について、有害物質の使用制限、リサイクル、回収などを含む資源循環の観点から管理する制度が設けられています。

一般に「韓国RoHS」と呼ばれますが、EU RoHSをそのまま韓国へ移した制度ではありません。対象製品、対象物質、適用除外、遵守方法などを韓国制度に基づいて確認することが重要です。

POINT|電気電子製品・自動車・有害物質・資源循環
🇹🇼
TAIWAN

台湾

台湾では、毒性・懸念化学物質の管理と、化学物質の登録制度を組み合わせて化学物質を管理しています。電気・電子製品については、製品規格・表示の枠組みの中で有害物質含有を管理する台湾RoHSも重要です。

毒性及び懸念化学物質管理法

毒性・懸念化学物質を指定して管理

対象:毒性化学物質・懸念化学物質

台湾では、人の健康や環境への影響が懸念される化学物質を指定し、製造、輸入、販売、使用、保管などについて管理する制度が設けられています。

対象物質の種類や取扱量などによって、許可、登記、承認、記録など必要となる対応が異なります。対象物質かどうかだけでなく、どのような事業活動で取り扱うかまで確認する必要があります。

POINT|毒性物質・懸念物質・製造輸入・取扱管理

新規・既有化学物質登録

化学物質の上市前後に情報を登録

対象:新規化学物質・既有化学物質

台湾では、新規化学物質と一定の既有化学物質について、製造・輸入量や物質情報などに応じた登録制度が設けられています。

新規物質については上市前の確認が特に重要です。既有化学物質についても、指定された物質では標準登録などが求められる場合があり、インベントリに存在するだけで対応が完了するとは限りません。

POINT|新規物質・既有物質・登録・製造輸入

台湾RoHS

電気・電子製品の有害物質含有を表示

対象:対象となる電気・電子製品

台湾RoHSでは、CNS 15663を基礎として、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEなどの含有状況を管理・表示します。

CORE SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE

EU RoHSと共通する物質が多い一方、台湾では対象製品ごとの検査・登録制度や表示要求との関係が重要です。EU向けRoHS資料だけで台湾要求を満たすと判断せず、対象製品に適用される台湾側の要求を確認します。

POINT|CNS 15663・電気電子製品・含有表示
🇺🇸
UNITED STATES

米国

米国で重要なのは、「米国の化学物質規制=TSCA」ではないことです。連邦レベルの化学物質管理に加えて、労働安全、情報開示、さらにカリフォルニア州をはじめとする州独自の規制を確認する必要があります。

TSCA

米国の工業化学物質管理の中核

対象:工業用途を中心とする化学物質

TSCA(Toxic Substances Control Act:有害物質規制法)は、米国における工業化学物質管理の中心となる連邦法です。EPA(米国環境保護庁)が、新規化学物質の事前審査や既存化学物質のリスク評価・管理などを行います。

新規化学物質ではTSCA Inventoryへの収載状況が重要で、対象となる新規物質の製造・輸入前にはPMN(Premanufacture Notice)が必要となる場合があります。既存物質についても、リスク評価の結果に基づき用途や濃度などに規制が設けられる場合があります。

POINT|TSCA Inventory・新規化学物質・PMN・リスク評価

Hazard Communication Standard

職場の化学物質リスクを伝える

対象:職場で使用される危険有害化学品

HazCom(Hazard Communication Standard)は、OSHA(米国労働安全衛生局)が所管する職場の危険有害性情報伝達制度です。

化学品の分類、ラベル、SDS、安全教育などを通じて労働者へ危険有害性を伝えることが中心です。TSCAが化学物質そのものの製造・輸入やリスク管理を扱うのに対し、HazComは職場での情報伝達と労働者保護という異なる役割を持ちます。

POINT|OSHA・職場安全・ラベル・SDS・GHS

California Proposition 65

「含有」だけでなく「ばく露」を見る

対象:発がん性または生殖毒性があると州が指定した化学物質へのばく露

Proposition 65は、カリフォルニア州が発がん性または生殖毒性があると指定した化学物質への一定以上のばく露が想定される場合、事業者に警告表示を求める制度です。

RoHSのように「製品中に対象物質が一定濃度以上含まれているか」だけで判断する制度ではありません。対象物質の存在に加え、製品の使用方法や人へのばく露量を考える必要がある点が大きな特徴です。

KEY DIFFERENCE
RoHS:主に製品中の含有濃度を見る
Proposition 65:主に人へのばく露を見る
POINT|カリフォルニア州・発がん性・生殖毒性・ばく露・警告

州別化学物質規制

米国では「どの州で売るか」まで確認する

対象:州および製品カテゴリーによって異なる

米国では連邦法に加えて、各州が独自の化学物質規制を設けています。対象はPFAS、難燃剤、重金属、子ども向け製品、包装材、化粧品など多岐にわたり、州によって対象物質、製品、報告義務、販売制限が異なります。

したがって米国向け製品では、「TSCAに適合しているから米国全体で問題ない」とは限りません。販売する州と製品カテゴリーを特定したうえで、州法まで確認することが重要です。

POINT|州法・製品別・物質別・販売地域
🇨🇦
CANADA

カナダ

カナダの化学物質管理では、CEPAを法的基盤とする既存化学物質のリスク管理と、新規化学物質の届出制度が中心となります。製品分野によっては、特定有害物質を対象とする個別規制も確認が必要です。

CEPA

カナダの化学物質・環境管理の基本法

対象:化学物質、環境・健康リスクを有する物質など

CEPA(Canadian Environmental Protection Act, 1999:カナダ環境保護法)は、人の健康や環境に影響を及ぼす可能性のある物質を評価・管理するための主要な法的枠組みです。

カナダでは、既存化学物質についてリスク評価を行い、その結果に応じて禁止、使用制限、排出管理などの措置が講じられます。EU REACHのような一つの登録制度だけを見るのではなく、CEPAの下で対象物質にどのような管理措置が設定されているかを確認することが重要です。

POINT|リスク評価・既存化学物質・環境・人健康・リスク管理

新規物質届出制度

カナダ市場への投入前に新規性を確認

対象:カナダで新規となる化学物質・ポリマーなど

カナダでは、DSL(Domestic Substances List:国内物質リスト)への収載状況が、化学物質が新規物質に該当するかを判断する重要な基準となります。

DSLに収載されていない対象物質を製造・輸入する場合には、数量や物質区分などに応じて、事前の情報提出が必要となる場合があります。したがって、カナダ向け化学品では、まずDSLへの収載状況を確認することが基本です。

POINT|DSL・新規物質・製造輸入・事前届出

特定有害物質の禁止・制限

特定物質には個別の禁止・制限が設定される

対象:個別に指定された有害物質・製品

カナダでは、CEPAに基づくリスク管理の一環として、特定の有害物質について製造、使用、販売、輸入などを禁止または制限する個別規則が設けられています。

企業実務では、化学物質がDSLに収載されているかだけでなく、その物質について個別の禁止・制限措置が存在しないかまで確認する必要があります。製品中の含有物質についても、用途や適用除外を含めた確認が重要です。

POINT|禁止・制限・特定有害物質・用途・適用除外
🇬🇧
UNITED KINGDOM

英国

英国ではEU離脱後、EU制度を基礎としながら独自の化学物質管理制度が運用されています。特に注意したいのは、英国とEUを同じ規制市場として扱えないことです。

UK REACH

英国独自の化学物質登録・評価制度

対象:英国で製造・輸入される化学物質など

UK REACHは、EU離脱後の英国で運用される化学物質の登録、評価、認可、制限の制度です。基本的な考え方はEU REACHを引き継いでいますが、EU REACHとは別の法制度として運用されています。

EU REACHで登録済みであっても、それだけで英国市場への対応が完了するとは限りません。英国側の登録主体、移行措置、登録期限などを確認し、EUと英国を分けて管理する必要があります。

POINT|登録・評価・認可・制限・EU REACHとの分離

GB CLP

化学品の分類・表示・包装を管理

対象:化学物質・混合物

GB CLPは、Great Britainにおける化学品の分類、表示、包装を定める制度です。化学品の危険有害性を分類し、その結果をラベルや包装などへ反映します。

EU CLPを基礎としていますが、EU離脱後は制度改正が必ずしも同じタイミング・内容で進むとは限りません。EU向けと英国向けで、分類や表示要求に差が生じていないかを継続的に確認する必要があります。

POINT|分類・ラベル・包装・GHS・Great Britain

UK RoHS

電気・電子機器の10物質を制限

対象:電気・電子機器

UK RoHSは、電気・電子機器に含まれる鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEと、DEHP、BBP、DBP、DIBPの4種類のフタル酸エステルを含む10物質を制限する制度です。

10 RESTRICTED SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE / DEHP / BBP / DBP / DIBP

対象物質はEU RoHSと共通しますが、英国は独自の法域です。適用除外や制度改正について、EU側の変更が自動的に英国へ反映されると考えず、英国側の最新要求を確認することが重要です。

POINT|10物質・電気電子機器・最大許容濃度・適用除外
🇦🇺
AUSTRALIA

オーストラリア

オーストラリアでは、工業用途の化学物質をAICISが管理しています。輸入・製造する物質が既存インベントリに収載されているか、どの導入カテゴリーに該当するかを確認することが実務の出発点です。

AICIS

工業化学物質の輸入・製造をリスクに応じて管理

対象:工業用途の化学物質

AICIS(Australian Industrial Chemicals Introduction Scheme)は、オーストラリアで工業化学物質を輸入または製造する事業者に適用される化学物質管理制度です。

既存物質についてはAustralian Inventory of Industrial Chemicalsへの収載状況を確認します。新規またはインベントリ条件外の導入では、リスク等に応じてExempted、Reported、Assessedなどのカテゴリーを判断します。

EU REACHのように「一定数量以上なら一律に登録」という理解では不十分です。物質の用途、ばく露、ハザード、導入量などを踏まえて、どのカテゴリーに該当するかを確認することが重要です。

POINT|Inventory・工業化学物質・輸入製造・リスクカテゴリー
🇳🇿
NEW ZEALAND

ニュージーランド

ニュージーランドでは、HSNO法を中心として有害物質を管理しています。化学物質そのものだけでなく、その危険有害性や用途に応じた承認・管理条件を確認することが特徴です。

HSNO

有害物質を承認と管理条件でコントロール

対象:危険有害性を持つ化学物質・混合物など

HSNO(Hazardous Substances and New Organisms Act)は、ニュージーランドにおける有害物質と新生物の管理を定める法律です。化学品についてはEPA(Environmental Protection Authority)が主要な役割を担います。

有害物質を輸入・製造する場合、既存の個別承認やGroup Standardに該当するかを確認し、適用される管理条件に従う必要があります。

実務では、成分だけを確認するのではなく、製品の危険有害性分類と、どの承認枠組みに該当するかを確認することが重要です。

POINT|有害物質・EPA・承認・Group Standard・危険有害性
🇮🇳
INDIA

インド

インドでは、化学物質を一つの包括的な「REACH型制度」だけで管理しているわけではありません。危険化学物質、製品規格、電子・電気機器、廃棄物など、複数の法令・規則を対象製品や事業活動に応じて確認する必要があります。

危険化学物質関連規則

危険化学物質の製造・保管・輸入を管理

対象:指定された危険化学物質など

インドでは、Manufacture, Storage and Import of Hazardous Chemical Rules(MSIHC Rules)などにより、一定の危険化学物質について製造、保管、輸入時の安全管理を定めています。

対象物質や数量によって、届出、安全報告、緊急時対応などの要求が関係します。化学品をインドへ輸出する場合は、製品中の成分だけでなく、輸入量や保管・取扱形態も含めて適用性を確認する必要があります。

POINT|危険化学物質・製造・保管・輸入・安全管理

インドRoHS

電気・電子機器の6物質を制限

対象:対象カテゴリーの電気・電子機器

インドではE-Waste関連規則の中で、対象となる電気・電子機器について鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDEの6物質の使用を制限しています。

6 RESTRICTED SUBSTANCES
鉛 / 水銀 / カドミウム / 六価クロム / PBB / PBDE

EU RoHSと共通する物質がありますが、対象製品、法的根拠、遵守手続きはインド独自です。EU RoHSへの適合だけを根拠として判断せず、インドのE-Waste制度に基づく対象範囲と要求事項を確認する必要があります。

POINT|6物質・電気電子機器・E-Waste・含有制限
🌐
GLOBAL FRAMEWORKS

国境を越えて影響する国際的な枠組み

ここまで見てきた各国・地域の規制とは別に、世界の化学物質管理には国際条約や国際的な分類ルールがあります。これらは各国の国内法そのものではありませんが、各国の規制を理解するうえで重要な共通基盤となっています。

ストックホルム条約(POPs条約)

世界規模で残留性有機汚染物質の廃絶・削減を進める

対象:国際的に指定された残留性有機汚染物質

POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)は、環境中に長期間残留し、生物に蓄積し、長距離を移動するなどの性質を持つ有機化学物質です。ストックホルム条約は、こうした物質から人の健康と環境を保護することを目的としています。

条約で対象物質が追加されると、締約国は国内法制度を通じて製造・使用・輸出入などの廃絶または制限を進めます。そのため、POPs規制は一つの国だけを見ればよい制度ではなく、国際条約から各国法へ展開される規制として理解することが重要です。

POINT|国際条約・残留性・生物蓄積性・長距離移動・廃絶・制限

水俣条約

水銀のライフサイクル全体を国際的に管理

対象:水銀、水銀化合物、水銀添加製品など

水銀に関する水俣条約は、水銀による人の健康と環境への影響を世界的に低減するための国際条約です。水銀の供給・貿易、製品、製造工程、排出・放出、保管、廃棄物など幅広い段階を対象とします。

製造業にとって重要なのは、水銀が単に「含有禁止物質」として扱われるだけではない点です。対象製品や製造工程など、ライフサイクルのどの段階が規制対象となるかを確認する必要があります。

POINT|水銀・製品・製造工程・排出・貿易・廃棄物

GHS

化学品の危険有害性を世界共通の考え方で伝える

対象:化学品の危険有害性分類・ラベル・安全データシート

GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)は、化学品の危険有害性を分類し、ラベルやSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)によって情報を伝達するための国際的な枠組みです。

GHS自体が世界共通の一つの法律として企業を直接規制するわけではありません。各国・地域がGHSを国内制度へ取り入れるため、採用している版や分類区分、表示要求などには違いがあります。「GHS対応済み」だけではなく、販売先の制度に適合しているかを確認する必要があります。

POINT|危険有害性分類・ラベル・SDS・国際調和・各国実装
HOW TO READ

世界の化学物質規制は「規制名」ではなく、5つの視点で読む

世界の規制を一覧にすると、REACH、RoHS、TSCA、化審法など、多数の名称が並びます。しかし、名称を暗記するだけでは実務にはつながりません。

規制ごとの差を理解するには、まず「何を、どの段階で、どのように管理する制度なのか」を見ると整理しやすくなります。

01
化学物質そのもの
製造・輸入する化学物質の登録、届出、評価などを求める制度。
02
製品中の含有物質
電気電子機器など、特定製品に含まれる有害物質の濃度や使用を制限する制度。
03
危険有害性の伝達
分類、ラベル、SDSなどを通じて化学品の危険有害性を伝える制度。
04
特定物質の禁止・制限
特定の有害物質について製造、使用、販売、輸出入などを禁止・制限する制度。
05
廃棄・環境への排出
使用後の製品、廃棄物、環境への排出・放出までを管理する制度。
KEY POINT
同じ物質でも、複数の規制が同時に関係する。

「この物質は規制されているか」だけではなく、「どの国で」「どの製品に」「どの用途で」「どの段階に」「どの要求が適用されるか」を確認することが、化学物質規制を理解する基本です。

PRACTICAL VIEW

製造業は何を確認すればよいのか

海外へ製品や化学品を供給する場合、最初から個別物質の分析を考えるのではなく、まず自社製品と販売先に適用される規制を特定する必要があります。

STEP 1|どこへ販売するのか
EU、米国、中国、日本など、販売・輸出先の法域を確認する。
STEP 2|何を販売するのか
化学物質、混合物、成形品、電気電子機器、包装材など、製品の法的位置付けを確認する。
STEP 3|どの規制が適用されるのか
化学物質登録、製品含有規制、表示、SDS、廃棄物規制など、適用される制度を整理する。
STEP 4|何を証明する必要があるのか
サプライヤー情報、SDS、材料情報、適合宣言、試験報告書など、要求を裏付ける情報を確認する。
STEP 5|分析・試験が本当に必要か
法令要求、顧客要求、サプライヤー情報、材料リスクを整理したうえで、必要な場合に対象物質と試験方法を決める。
TICNOLOGY JAPAN VIEW

化学物質規制は「物質リスト」ではなく、仕組みから理解する

世界の化学物質規制を並べると、その数の多さに目が向きます。しかし、企業実務で本当に重要なのは、すべての規制名や規制物質を暗記することではありません。

重要なのは、「どの市場で、何を販売し、その製品にどの規制が適用され、何によって適合性を確認するのか」という流れを理解することです。

また、規制対応と分析試験は同じものではありません。規制によっては登録、届出、情報伝達、表示、サプライチェーン管理が中心となり、分析だけでは適合性を判断できない場合があります。一方で、含有濃度の確認など、分析データが重要な証拠となる場面もあります。

TICnology Japanでは、今後TICジャーナルで個々の規制を順次掘り下げます。本稿を世界の主要な化学物質規制を俯瞰する入口として、各制度の背景、対象、要求事項、分析・試験との関係を個別記事で詳しく整理していきます。

SUMMARY

世界の化学物質規制を理解するために

世界には、化学物質の登録・評価を求める制度、製品中の有害物質を制限する制度、危険有害性を伝える制度、特定物質を禁止する制度、廃棄や環境排出を管理する制度があります。

そして、一つの製品に一つの規制だけが適用されるとは限りません。同じ製品、同じ物質でも、販売する国、用途、製品カテゴリー、サプライチェーン上の立場によって確認すべき要求は変わります。

まず世界の規制の全体像を知る。そのうえで、自社に関係する市場と製品から必要な制度を絞り込む。この順番が、複雑な化学物質規制を理解するための出発点になります。

ADVISORY
海外規制と分析・試験要求の整理

複数国への製品展開では、対象規制、規制物質、サプライヤー情報、試験項目を個別に確認する必要があります。TICnology Japanでは、化学物質規制と試験・分析要求の整理、外部試験機関の活用、分析体制の見直しなど、TICに関する課題整理を支援しています。

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本記事について

本記事は、各国・地域の政府機関、規制当局、国際機関等が公開している情報をもとに、世界の主要な化学物質規制の全体像を把握することを目的としてTICnology Japanが独自に整理したものです。

各制度の対象範囲、対象物質、適用除外、移行措置、届出・登録方法、試験要求等は、製品、用途、数量、事業者の立場などによって異なる場合があります。また、法改正や対象物質の追加等により変更されることがあります。

本記事にはTICnology Japanによる分析・考察を含みます。特定の企業、製品、サービス、投資または取引を推奨するものではありません。実際の規制対応にあたっては、各国・地域の公的機関が公表する最新の法令・公式情報をご確認ください。

主な参考資料

欧州委員会・欧州化学品庁(ECHA) 化学物質・製品規制関連資料
米国環境保護庁(EPA) Toxic Substances Control Act関連資料
California Office of Environmental Health Hazard Assessment Proposition 65関連資料
日本国 経済産業省・厚生労働省・環境省 化学物質管理関連資料
中国関係当局 化学物質および電気電子製品有害物質管理関連資料
韓国 環境部・関係当局 化学物質管理関連資料
Taiwan Environmental Management Administration 化学物質管理関連資料
Environment and Climate Change Canada CEPA・New Substances関連資料
UK Health and Safety Executive UK REACH・GB CLP関連資料
UK Government RoHS関連資料
Australian Industrial Chemicals Introduction Scheme(AICIS)公式資料
New Zealand Environmental Protection Authority HSNO関連資料
インド政府・Central Pollution Control Board 化学物質・E-Waste関連資料
Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants 公式資料
Minamata Convention on Mercury 公式資料
United Nations Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals

情報基準日:2026年8月24日

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