PPWR対応、過去の分析データはそのまま使える?――重金属・総フッ素から考える「再分析」の判断

PPWR(Regulation (EU) 2025/40)への対応が本格化するなか、すでにRoHSなどで取得した分析データを持つ企業では、一つの疑問が生じます。

そのデータは、PPWRでも使えるのか。

鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの分析結果がすでにある。食品接触包装であれば、フッ素やPFASに関するデータを取得しているケースもあるでしょう。

PPWR対応だからといって、すべてを改めて分析しなければならないわけではありません。一方、過去に分析しているというだけで、そのデータが現在のPPWR対応にそのまま使えるとも限りません。

ポイントは、「分析データがあるか」ではなく、「そのデータで現在の要求を説明できるか」です。

PPWRの重金属規制は「4物質の合計」

PPWR第5条4項では、包装または包装構成要素に含まれる鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの濃度の合計を100 mg/kg以下とすることが定められています。

ここで注意したいのが、RoHSとの違いです。

RoHSでは、鉛、水銀、六価クロムはそれぞれ0.1%、カドミウムは0.01%というように、対象物質ごとの最大許容濃度を確認します。

一方、PPWRでは4物質の合計値を見ることになります。

比較 RoHS PPWR
対象 均質材料 包装・包装構成要素
重金属の考え方 物質ごとの最大許容濃度 4物質の濃度合計
基準 Pb・Hg・Cr(VI):0.1%
Cd:0.01%
Pb+Cd+Hg+Cr(VI):100 mg/kg以下

そのため、過去の重金属分析レポートに各物質の測定結果が記載されていれば、PPWRの基準と照らして評価できるケースがあります。

重金属分析そのものは、決して新しい試験ではありません。

PPWR対応で問題になるのは、むしろ既存の分析結果を、現在の包装についての適合根拠として使えるかどうかです。

過去の分析レポートは使えるのか

例えば、数年前に取得した重金属分析レポートが残っているとします。

その後、包装材料も配合もサプライヤーも製造工程も変わっていないのであれば、そのデータを根拠として利用できる可能性があります。

反対に、分析後に材料変更やサプライヤー変更などが行われていれば、過去のデータが現在の包装をどこまで代表しているのかを確認する必要があります。

つまり重要なのは、単純なレポートの「古い・新しい」だけではありません。

既存データを確認するときのポイント

・いつ分析したのか。
・何を分析したのか。
・その後、対象となる包装に何か変化があったのか。

こうした情報とあわせて考える必要があります。

PPWRでは、第5条の物質要件への適合について技術文書によって示すことが求められており、分析はその根拠を構成する一つの手段です。

したがって、「PPWRだから新しく分析しなければならない」と一律に考える必要はありません。

食品接触包装なら「総フッ素」という別の視点もある

食品接触包装では、さらにPFASへの対応が加わります。

PPWR第5条5項では、2026年8月12日から食品接触包装についてPFASの濃度限度が適用されています。

PPWR 第5条5項 濃度限度
単一PFAS 25 ppb
対象PFASの合計 250 ppb
PFAS(ポリマーPFASを含む) 50 ppm

また、総フッ素が50 mg/kgを超える場合には、技術文書作成のため、求めに応じてPFASまたは非PFASとしてのフッ素量を示す仕組みも規定されています。

さらに欧州委員会は2026年、現時点では食品接触包装中PFASについてEUレベルで調和された分析法がないことを踏まえ、段階的な確認方法を示しています。

その最初のステップとなるのが総フッ素(TF)です。

総フッ素が50 mg/kg未満であれば、そのサンプルは適合とみなすことができるとされ、50 mg/kgを超えた場合には、有機フッ素の確認や、さらにPFASに関する分析へ進むという考え方が示されています。

ここでも重要なのは、最初から「どの分析をするか」を決めることではありません。

どの包装なのか、どの要求が適用されるのか、そしてすでに何のデータを持っているのか。

そこから考える方が合理的です。

「計算すれば分かる」と「そのまま使える」は違う

ここからが、実務では意外に重要です。

例えば、過去の重金属分析レポートに4物質の結果が記載されているとします。

環境部門や品質保証部門の担当者であれば、その数値を見てPPWRの100 mg/kgという基準と比較することは、それほど難しくないでしょう。

しかし、その資料を実際に使うのが商品を販売する営業担当者だったらどうでしょうか。

顧客から「この包装はPPWRに対応していますか」と聞かれたとき、営業担当者が過去の分析レポートを読み、4物質の数値を確認し、その合計値とPPWRの基準との関係まで説明する必要があるとすれば、社内で別の説明資料を作る必要が出てくるかもしれません。

環境・品質部門から営業部門へ説明し、営業部門から顧客へ説明する。

さらに質問が戻ってくれば、再び環境・品質部門で確認する。

分析データそのものは存在していても、それをPPWR対応の情報として社内外で使える状態にするための工数が発生します。

報告書の「使いやすさ」もコストになる

そこで、既存データを使う場合と、新たに分析する場合の比較が変わってきます。

既存データを利用すれば、確かに新しい分析費用は発生しません。

既存データを利用する場合にも、例えば次のような工数が考えられます。

・過去データが現在の包装を代表しているかの確認
・PPWR基準との照合
・社内説明資料の作成
・営業部門などへの説明
・顧客からの問い合わせ対応

一方、新たにPPWRを意識した分析を行い、対象物質や基準との関係が明確な報告書を取得すれば、その報告書自体を社内外の情報伝達に利用しやすくなる場合があります。

つまり比較すべきなのは、
「既存データ=0円」対「新規分析=分析費」
だけではありません。

既存データを現在のPPWR対応に利用するために必要となる工数や関連経費まで含めて考える必要があります。

分析そのものが難しいから再分析するのではなく、報告書の形を変えることで、より明確な情報伝達手段を合理的に得られる。

そう考えると、時間に余裕がある場合でも、新たに分析することが合理的なケースはあり得ます。

もちろん、既存データが現在の包装を十分に代表し、そのまま技術文書や社内外の説明に利用できるのであれば、改めて分析する必要性は低くなります。

PPWR第16条から考える「情報の流れ」

PPWRでは、包装や包装材料のサプライヤーからメーカーへ、適合を示すために必要な情報や文書を提供することも求められています。

つまりPPWR対応は、一つの部署の中だけで完結するものではありません。

サプライヤー → メーカー

環境・品質部門 → 営業部門

企業 → 顧客

規制への適合を支える情報が、サプライチェーンや社内を通じて伝わっていくことを前提に考える必要があります。

だからこそ、分析結果についても「数値が存在する」ことだけでなく、必要な人に正しく伝わり、必要な場面で使えるかという視点が重要になります。

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過去の分析データがあるから使う。

古いデータだから分析し直す。

PPWRだから新たに分析する。

いずれも、それだけで決めるものではありません。

分析した時期、その後の材料や仕様の変更、現在の規制要求、サプライヤーから得られる情報、提出先が求める内容、そして社内で情報を利用するために必要となる工数や関連経費。

こうした条件によって、同じ分析データであっても、その価値や使い方は変わります。

既存データを活用する。足りない情報を補う。あるいは、新たな分析によって、より明確な根拠を用意する。

大切なのは、PPWRの要求を正確に理解したうえで、その時点の自社にとって合理的な方法を選ぶことではないでしょうか。

PPWR対応全般について、お気軽にご相談ください。

参考資料

・European Union, Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste

・European Commission, Guidelines on the application of provisions of Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste

※本記事はPPWR対応に関する一般的な情報を整理したものであり、個別製品・包装の法的適合性を判断するものではありません。実際の対応にあたっては、最新の法令・公式文書をご確認ください。

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