台湾へ電気・電子製品を輸出する際、確認しておきたい規制の一つが、一般に「台湾RoHS」と呼ばれる制度です。
台湾では、経済部標準検験局(BSMI:Bureau of Standards, Metrology and Inspection)が、対象となる電気・電子製品の商品検査において、台湾国家標準CNS 15663「電機電子類設備降低限用化學物質含量指引」を採用しています。
CNS 15663では、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、六価クロム(Cr+6)、PBB、PBDEの6物質について基準値を定めるとともに、Section 5で「含有標示(含有状況表示)」の方法を規定しています。BSMIは対象となる製品の商品検査に、このSection 5の表示要件を組み込んでいます。
台湾向け製品では、対象製品の確認 → 適用規格の確認 → 6物質の含有状況確認 → CNS 15663表示 → BSMI商品検査への対応という流れで整理すると、必要な対応を把握しやすくなります。
本記事では、2026年時点のBSMI公式情報をもとに、台湾RoHSの対象製品、6物質、CNS 15663、表示方法、必要書類について解説します。
1.台湾RoHSとは?
「台湾RoHS」は、台湾の電気・電子製品における有害物質管理を説明する際に広く使われる呼称です。
制度を理解するうえで中心となるのが、台湾国家標準CNS 15663と、BSMIによる商品検査制度です。
BSMIは、対象となる電気・電子製品について、安全性やEMCなどの適用規格とともに、CNS 15663 Section 5「含有標示」を検査要件として指定しています。
そのため台湾向け製品では、RoHSの6物質を確認するとともに、
- 自社製品がBSMIの商品検査対象に該当するか
- どの検査規格が指定されているか
- CNS 15663が適用されているか
- どのような表示・技術資料が必要か
までを一連の流れとして確認することが重要です。
2.対象となる製品は?
台湾RoHS対応では、最初に製品がBSMIの商品検査対象に該当するかを確認します。
BSMIは電気製品・電子製品などについて、強制検査の対象となる製品を公告しており、対象製品ごとに適用される検査規格や検査方式などが定められています。
そのため実務では、次の順序で確認すると整理しやすくなります。
複合機能・多機能製品については、それぞれの機能に関連する検査規格や認証要件も確認します。
台湾RoHSでは、まず「その製品にCNS 15663が適用されるか」を確認することが出発点です。製品ごとのBSMI公告と適用規格を確認します。
3.台湾RoHSの対象となる6物質
CNS 15663で規定される限用物質は、次の6物質です。
| 限用物質 | 化学記号等 | 基準値 |
|---|---|---|
| 鉛 | Pb | 0.1 wt%(1,000 ppm) |
| 水銀 | Hg | 0.1 wt%(1,000 ppm) |
| カドミウム | Cd | 0.01 wt%(100 ppm) |
| 六価クロム | Cr+6 | 0.1 wt%(1,000 ppm) |
| ポリ臭化ビフェニル | PBB | 0.1 wt%(1,000 ppm) |
| ポリ臭化ジフェニルエーテル | PBDE | 0.1 wt%(1,000 ppm) |
CNS 15663には排除項目も設けられているため、製品の部品・材料構成とあわせて確認します。
4.EU RoHSとの違いは?
台湾RoHSを理解する際には、EU RoHSとの制度設計の違いを押さえておくと分かりやすくなります。
EU RoHSでは、電気・電子機器について特定有害物質の使用制限を規定しています。
台湾では、BSMIの商品検査制度の中で、対象製品についてCNS 15663 Section 5に基づく限用物質の含有状況表示を求める仕組みが採用されています。
特に特徴的なのが、基準値を超える物質が存在する場合の表示です。
| 表示例 | 意味 |
|---|---|
| RoHS | 排除項目を除き、6物質が基準値を超えていない |
| RoHS(Pb) | 一部の単元で鉛が基準値を超えている |
| RoHS(Cd, Cr+6, PBB) | 一部の単元でCd、Cr+6、PBBが基準値を超えている |
この「含有状況を表示する」という考え方が、台湾RoHSを理解する重要なポイントです。
5.CNS 15663の「含有状況表示」とは?
CNS 15663 Section 5では、製品を構成する主要な単元ごとに、6物質の含有状況を表示する方法が定められています。
BSMIの表示例では、回路基板、モーター、スイッチ、電源コード、筐体などの単元について、それぞれ6物質の含有状況を示しています。
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| ○ | 当該限用物質の含有率が基準値を超えていない |
| 超出 0.1 wt% / 超出 0.01 wt% | 当該限用物質の含有率が基準値を超えている |
| - | CNS 15663の排除項目に該当 |
含有状況は、対象商品の本体、包装、ラベルまたは取扱説明書に表示できます。
Webサイトで含有状況を公開する方法も認められており、その場合はWebサイトのアドレスを本体、包装、ラベルまたは取扱説明書に明確に表示します。
6.商品検査標識の「RoHS」表示
CNS 15663が適用される対象製品では、商品検査標識の識別番号とともに、限用物質の含有状況を表示します。
たとえば、検査方式や申請内容に応じた識別番号とともに、次のような表示が使用されます。
または
RoHS(Pb)
RoHSは、CNS 15663の排除項目を除き、限用物質が基準値を超えていないことを示します。
RoHS(XX,XX)は、括弧内に記載された限用物質が基準値を超えていることを示します。
そのため台湾向け製品では、部材情報や分析情報の確認とともに、最終的な商品検査標識への表示内容まで確認することが重要です。
7.6物質はどのように確認する?
台湾RoHS対応では、製品を構成する部品・材料について、6物質の含有状況を確認します。
実務では、製品構成やサプライチェーンの状況に応じて、次の流れで必要な情報を整理します。
BSMIのRoHS申請資料では、申請にあたりRoHS関連の技術資料や「限用物質含有情況標示聲明書」などを準備する運用が示されています。
製品全体を一つの数値として見るのではなく、製品を構成する単元・部品・材料を整理して含有状況を確認することが、表示資料を作成するうえで重要です。
8.BSMI申請ではどのような資料を準備する?
BSMIは、電気・電子製品について「電機電子商品RoHS製作方式與申請指引」を公開しています。
新規申請では、RoHS関連技術資料とあわせて、たとえば次のような資料を準備します。
- 限用物質含有状況表示声明書
- 表示位置図
- RoHS関連技術資料
- 該当する申請に必要なその他の資料
すでに証書を取得している製品についても、部品変更、表示内容変更、構造追加、シリーズ型式追加など、申請内容に応じた書類が用意されています。
そのため台湾輸出では、RoHS確認とBSMI申請に必要な技術資料の準備を並行して進めることが効率的です。
9.基準値を超えた場合は?
BSMIの公式資料では、CNS 15663の基準値を超える限用物質がある場合について、RoHS(Pb)やRoHS(Cd, Cr+6, PBB)のように、その物質を商品検査標識に表示する方法が規定されています。
CNS 15663 Section 5の含有状況表でも、基準値を超える場合の表示方法が具体的に示されています。
実務では、基準値との比較 → 排除項目の確認 → 含有状況の表示 → 対象製品に適用されるBSMI検査要件の確認という流れで整理します。
この含有状況表示の仕組みは、台湾RoHSの制度を理解するうえで重要な特徴です。
10.誰がBSMI対応を行う?
台湾の商品検査制度では、台湾側の輸入者や製造者などが、対象製品について必要な検査・認証手続きを進めます。
海外メーカー・輸出者側では、台湾側の申請者が必要な手続きを行えるよう、たとえば次の情報を整理します。
- 製品仕様
- 型式情報
- 部品・材料構成
- 6物質の含有情報
- RoHS関連試験・分析情報
- 技術資料
- 表示情報
特に複数のサプライヤーから部品を調達している製品では、RoHS情報を製品単位で集約できる体制を整えておくことが重要です。
11.台湾輸出前に確認すべき実務フロー
STEP 1 製品を特定する
製品名、型式、仕様、機能、用途などを整理します。
STEP 2 BSMI対象製品を確認する
製品区分やC.C.C. Code等をもとに、商品検査の対象となるか確認します。
STEP 3 適用規格を確認する
対象製品に指定されている安全、EMC、CNS 15663などの規格を確認します。
STEP 4 部品・材料構成を整理する
回路基板、ケーブル、筐体、モーターなど、製品を構成する主要な単元を整理します。
STEP 5 6物質の含有状況を確認する
サプライヤー情報や必要な試験・分析情報を整理します。
STEP 6 排除項目を確認する
該当する場合は、CNS 15663に基づく排除項目との関係を確認します。
STEP 7 含有状況表示を作成する
CNS 15663 Section 5に基づき、6物質の含有状況を整理します。
STEP 8 BSMI申請資料を準備する
声明書、表示位置図、技術資料など、該当する申請に必要な資料を準備します。
STEP 9 商品検査標識を確認する
RoHSまたはRoHS(XX,XX)を含む表示内容を確認します。
STEP 10 変更管理を行う
部品、材料、サプライヤー、型式などの変更時には、RoHS情報やBSMI申請への影響を確認します。
台湾RoHS対応では、6物質の含有状況だけでなく、対象製品、適用規格、部品・材料情報、CNS 15663表示、BSMI申請までを一つの流れとして整理することが重要です。
特に海外メーカーにとっては、製品を構成する部品・材料のRoHS情報を早い段階で整理し、台湾側の輸入者や申請者と共有することで、必要な試験・技術資料・表示内容を効率的に判断できます。
こうした製品含有化学物質情報は、台湾だけでなく、EU、中国、韓国など複数市場のRoHS・製品環境規制への対応にも活用できます。
各市場の規制を個別に管理するのではなく、製品・部品・材料情報を共通基盤として管理し、グローバルな市場アクセスにつなげていくことが重要です。
TICnology Japanでは、台湾向け電気・電子製品について、適用規制や必要情報の整理から、規制調査、必要な試験・分析、認証支援を提供する専門機関の選定まで、案件に応じた対応方針の構築をサポートします。
TICnology Japanが、適用規制や必要情報の整理から、適切な試験・認証サービス提供先の選定までサポートします。
参考資料
- 台湾 経済部標準検験局「RoHS規定」
- 台湾 経済部標準検験局「電機電子商品RoHS製作方式與申請指引」
- 台湾 経済部標準検験局「應施檢驗商品相關檢驗規定」
- 台湾国家標準 CNS 15663「電機電子類設備降低限用化學物質含量指引」
- 台湾 経済部標準検験局「限用物質含有情況標示聲明書」
情報基準日:2026年10月20日
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の台湾向け輸出・商品検査にあたっては、最新のBSMI公告、対象製品、C.C.C. Code、指定検査規格、製品仕様および個別の申請条件をご確認ください。
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