台湾へ化学物質や化学製品を輸出する際には、対象となる物質が台湾でどのように登録・管理されているかを確認することが重要です。
台湾では「新化学物質及び既有化学物質資料登録弁法(新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法)」に基づき、台湾国内で製造・輸入される化学物質について、物質情報や数量、用途、危害情報などを登録する制度が設けられています。
制度上、化学物質は大きく「新規化学物質」と「既有化学物質」に分けて考えます。
新規化学物質では、年間の製造・輸入数量などに応じて「少量登録」「簡易登録」「標準登録」が設定されています。既有化学物質では、年間100kg以上を製造・輸入する場合の「第一段階登録」を基本として、指定された物質について標準登録を行う仕組みがあります。
日本企業が台湾向けの登録対応を進める際には、物質の特定 → 新規・既有の判定 → 用途 → 年間輸入数量 → 登録区分 → 必要情報 → 台湾側輸入者との役割分担という流れで整理することで、輸出前に必要な対応を具体化できます。
本記事では、2026年時点の制度をもとに、台湾の新規・既有化学物質登録制度と、日本企業が台湾輸出時に確認しておきたいポイントを解説します。
1.台湾の「新規・既有化学物質登録」とは?
台湾の化学物質登録制度は、台湾国内で製造・輸入される化学物質について、その物質情報や危害情報、ばく露情報などを把握し、適切な化学物質管理につなげるための制度です。
制度の中心となるのが、台湾環境部が所管する「新化学物質及び既有化学物質資料登録弁法」です。
同弁法は「毒性及び懸念化学物質管理法(TCCSCA)」第30条に基づいて制定されています。
実務では、まず対象となる物質を特定し、新規化学物質(新化學物質)または既有化学物質(既有化學物質)のどちらに該当するかを確認します。
そのうえで年間製造・輸入数量や用途、物質の性質などを確認し、適用される登録区分と必要情報を整理します。
2.「新規化学物質」と「既有化学物質」
台湾で化学物質登録を検討する際の重要なポイントが、新規・既有の判定です。
基本的には、台湾の既有化学物質インベントリ(既有化學物質清冊)への収載状況を確認します。
| 区分 | 基本的な考え方 | 主な登録制度 |
|---|---|---|
| 新規化学物質 | 既有化学物質インベントリに収載されていない物質 | 少量登録・簡易登録・標準登録 |
| 既有化学物質 | 既有化学物質インベントリに収載されている物質 | 第一段階登録・標準登録 |
実務では、物質名に加えてCAS登録番号や物質同定情報を整理し、台湾での収載状況と照合します。
新規化学物質として登録された物質についても、一定の条件を満たした場合には既有化学物質インベントリへ収載される仕組みがあります。
3.登録対象となる物質を確認する
新規・既有の判定とあわせて、製品を構成するどの物質について登録確認が必要になるかを整理します。
特に化学製品では混合物の考え方が重要です。
台湾の登録制度では混合物自体は登録制度上の適用対象から除かれていますが、混合物を構成する個々の化学物質成分について登録要否を確認します。
たとえば、接着剤、塗料、インク、洗浄剤などを台湾へ輸出する場合には、次の順序で確認すると整理しやすくなります。
農薬、肥料、医薬品、化粧品、食品・食品添加物など、個別法令によって管理される物質・製品については、それぞれの制度との関係も確認します。
4.新規化学物質の3つの登録区分
一般的な新規化学物質については、年間の製造・輸入予定数量を基本として3つの登録区分が設けられています。
| 年間製造・輸入数量 | 登録区分 |
|---|---|
| 100kg未満 | 少量登録 |
| 100kg以上1トン未満 | 簡易登録 |
| 1トン以上 | 標準登録 |
基本的には、少量登録 → 簡易登録 → 標準登録の順に、年間数量に応じて求められる情報が増えていきます。
また、科学研究開発用途、製品・工程研究開発用途、限定場所中間体、ポリマー、事前確認を受けた低懸念ポリマーについては、用途や物質の性質、年間数量に応じた登録区分が設定されています。
新規化学物質では、年間数量 + 用途 + 物質の性質を組み合わせて登録区分を確認します。
5.サンプル輸出の場合は?
台湾へ試験・評価用のサンプルを少量輸出する場合も、対象物質、新規・既有の区分、用途、年間輸入数量を確認します。
新規化学物質では、科学研究開発用途や製品・工程研究開発用途について、それぞれの用途や数量に応じた取扱いが設けられています。
既有化学物質については、年間製造・輸入量が100kg以上となった場合、第一段階登録の対象となります。
サンプル輸出では、「サンプル」という名称だけで判断せず、物質・用途・年間数量を確認することがポイントです。
6.登録区分によって必要な情報はどう変わる?
新規化学物質では、登録区分に応じて提出する情報の範囲が段階的に設定されています。
少量登録
基本的な物質情報などを提出します。
簡易登録
少量登録よりも提出情報の範囲が広がり、物質の性質や安全性に関する情報が追加されます。
標準登録
物質情報に加えて、物理化学的性状、毒性、生態毒性、危害・ばく露評価など、より広範な情報が対象となります。
標準登録では年間製造・輸入数量による数量区分も設定されているため、該当する区分に応じて必要データを確認します。
7.既有化学物質の「第一段階登録」
既有化学物質では、年間100kgが重要な数量基準となります。
台湾で既有化学物質を年間100kg以上製造または輸入する場合、その事実が発生した日から6か月以内に第一段階登録を申請します。
登録が承認されると、台湾環境部から第一段階登録コードが発行されます。年間100kg未満の場合にも、任意で第一段階登録を行うことができます。
日本企業が台湾へ既有化学物質を輸出する際には、対象物質の年間数量とともに、台湾側輸入者の登録状況を確認することが重要です。
8.既有化学物質の「標準登録」
既有化学物質には、第一段階登録に加えて標準登録の制度があります。
台湾環境部は第一段階登録の状況などを踏まえ、標準登録の対象物質、数量区分、登録期限を指定することができます。
対象となった物質については、物質情報に加えて、物理化学的性状、毒性、生態毒性、危害・ばく露評価など、指定された情報を提出します。
第一段階登録
↓
標準登録対象の確認
↓
必要情報の提出
9.誰が登録するのか?
日本企業が台湾へ化学品を輸出する場合、台湾側で誰が登録主体となるかを確認します。
台湾の制度では、化学物質を台湾国内で製造または輸入する事業者が登録を行います。登録者は、一定の要件を満たす台湾の代理人へ手続きを委任することもできます。
日本側では、たとえば次の情報を整理します。
- 物質名
- CAS登録番号
- 組成・含有濃度
- 年間輸出予定数量
- 用途
- SDS
- 必要に応じた物理化学・毒性・生態毒性情報
日本側が保有する製品・物質情報と、台湾側が行う登録手続きを早い段階で整理することが、スムーズな輸出準備につながります。
10.企業秘密の取扱い
化学物質登録では、組成や物質情報など企業の技術情報を取り扱うケースがあります。
台湾の登録制度には、一定の情報について工商機密(企業秘密)として秘密保持を申請する仕組みが設けられています。
対象には、登録者情報、化学物質の識別情報、製造・輸入情報、用途情報などがあります。
台湾側輸入者と登録対応を進める際には、登録に必要な情報提供と企業秘密の管理をあわせて検討することが重要です。
11.登録後の管理
登録後も、製造・輸入数量や登録情報を継続して管理します。
承認された新規化学物質・既有化学物質については、登録承認の翌年から、毎年4月1日から9月30日までの期間に前年の製造・輸入数量を申告します。
また、新たな科学的知見、用途、毒性・生態毒性情報、危害・ばく露評価情報などが得られた場合には、追加情報を提出する仕組みがあります。
12.環境部と労働部の制度を確認する
台湾では、環境部による新規・既有化学物質登録制度に加えて、労働部にも新規化学物質の登録制度があります。
そのため、新規化学物質を台湾へ輸出する場合には、それぞれの制度の適用関係を確認します。
13.TCCSCAとの関係
今回取り上げている「新規・既有化学物質資料登録制度」は、TCCSCA第30条を根拠としています。
TCCSCA上の毒性化学物質・懸念化学物質については、それぞれに適用される管理制度を確認します。
台湾向け化学品では、化学物質登録 → 関連規制への該当性 → 台湾国内での取扱条件という流れで整理することで、輸入後まで含めた対応を把握しやすくなります。
14.日本企業が台湾輸出前に確認すべき実務フロー
STEP 1 製品・成分情報を整理する
物質名、CAS登録番号、組成、含有濃度、SDS、用途などを整理します。
STEP 2 登録制度上の取扱いを確認する
化学物質、混合物、成形品、ポリマーなどの区分を確認します。
STEP 3 新規・既有を判定する
台湾の既有化学物質インベントリへの収載状況を確認します。
STEP 4 用途を確認する
通常用途、科学研究開発、製品・工程研究開発など、台湾での用途を確認します。
STEP 5 年間輸入数量を確認する
台湾側で予定されている年間輸入数量を整理します。
STEP 6 登録区分を確認する
新規化学物質では少量・簡易・標準登録など、既有化学物質では第一段階登録・標準登録の適用を確認します。
STEP 7 必要情報を整理する
該当する登録区分に必要な物質情報やデータを確認します。
STEP 8 台湾側の登録主体を確認する
輸入者、代理人、日本側メーカーの役割を整理します。
STEP 9 関連規制を確認する
環境部・労働部の制度や、対象物質に適用される関連規制を確認します。
STEP 10 登録後の管理体制を整える
数量、年次申告、登録情報などを継続的に管理します。
この流れを輸出前に整理することで、台湾側輸入者が必要とする情報、登録区分、必要データ、輸出開始までに行う手続きを把握しやすくなります。
台湾の新規・既有化学物質登録では、物質を正確に特定し、既有化学物質インベントリへの収載状況、用途、年間輸入数量を整理することが対応の起点となります。
特に化学製品では、CAS登録番号、組成、SDS、用途、年間数量などの情報を台湾側の輸入者と共有することで、登録区分や必要情報を効率的に判断できます。
さらに、こうした情報を共通の化学物質情報として管理することで、台湾に加えてEU、中国、韓国など、複数市場の化学物質規制への対応にも活用できます。
市場ごとの登録手続きを個別に管理するのではなく、グローバルな事業展開を支える化学物質情報管理へつなげていくことが重要です。
TICnology Japanでは、台湾向け化学品について、登録要否や必要情報の整理、規制調査から、必要な試験・登録申請支援を提供する専門機関の選定まで、案件に応じた対応方針の構築をサポートします。
TICnology Japanが、対象物質・登録要件の整理から対応方針の検討までサポートします。
参考資料
- 台湾 法務部 全国法規資料庫「新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法」
- 台湾 環境部化学物質管理署「化學物質登錄制度介紹」
- 台湾 環境部化学物質管理署「化學物質登錄類型與資訊」
- 台湾 環境部化学物質管理署「化學物質登錄資訊公開查詢平臺」
- 台湾 労働部職業安全衛生署「新化學物質登記管理辦法」
情報基準日:2026年10月16日
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の登録・輸入にあたっては、最新の法令、当局公告、対象物質、用途、年間数量および個別の取引条件をご確認ください。
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