台湾「毒性及び懸念化学物質管理法」とは?――規制対象・輸入手続き・許可制度を解説【2026年版】

台湾へ化学品を輸出する際には、製品に含まれる化学物質の種類や濃度、輸入数量、用途などに応じて、適用される規制を確認する必要があります。

その中心となる法律の一つが、台湾の「毒性及び懸念化学物質管理法(毒性及關注化學物質管理法)」です。英語では Toxic and Concerned Chemical Substances Control Act(TCCSCA) と呼ばれます。

台湾では、環境や人体への影響が懸念される化学物質を「毒性化学物質」または「懸念化学物質」として指定し、製造・輸入・販売・使用・貯蔵などの取扱いを管理しています。

対象物質や取扱条件によっては、許可・登録・承認などの手続きに加え、安全データシート(SDS)、表示、取扱記録、事故予防・緊急対応などが求められます。

日本企業が台湾へ化学品を輸出する場合、重要になるのは、製品・成分情報を起点として、規制対象への該当性から台湾側の輸入手続き、輸入後の管理までを体系的に確認することです。

本記事では、2026年時点の台湾の制度に基づき、毒性化学物質と懸念化学物質の違い、対象物質の確認方法、許認可制度、化学物質登録制度との関係、輸入実務のポイントを解説します。

1.台湾「毒性及び懸念化学物質管理法」とは?

台湾の「毒性及び懸念化学物質管理法」は、化学物質による環境汚染を防止し、人の健康を保護することを目的とした法律です。

従来の毒性化学物質を中心とした管理制度が拡充され、2019年の法改正によって「懸念化学物質」という管理区分が導入されました。

これにより、毒性や環境影響に基づいて指定される化学物質に加え、物質の特性や社会的な懸念などを踏まえて管理が必要と判断される化学物質についても、規制対象として指定できる仕組みとなっています。

法律上の「取扱い(運作)」には、製造、輸入、輸出、販売、運送、使用、貯蔵、廃棄などが含まれます。

POINT
台湾では、化学物質の輸入から流通、使用、保管、廃棄まで、ライフサイクル全体を視野に入れた管理が行われています。

2.「毒性化学物質」と「懸念化学物質」

TCCSCAでは、規制対象となる化学物質を大きく「毒性化学物質」と「懸念化学物質」に区分しています。

項目 毒性化学物質 懸念化学物質
中国語名称 毒性化學物質 關注化學物質
英語名称 Toxic Chemical Substances Concerned Chemical Substances
指定の考え方 毒性や環境影響などの特性 物質特性や社会的懸念など
分類 第1類~第4類 個別の指定・告示
主な管理 許可・登録・承認など 指定条件に基づく承認・管理など

毒性化学物質

法律で定められた毒性や環境影響などの特性を有し、台湾の中央主管機関によって指定された化学物質です。物質の特性に応じて、第1類から第4類までに分類されます。

懸念化学物質

物質の特性や国内外での関心、生活・消費に関係する問題などを踏まえ、環境汚染や健康影響を防止する観点から管理が必要と判断された化学物質です。

懸念化学物質については、物質ごとの告示により、管理濃度、取扱行為、数量基準などが定められます。

POINT
実務では、物質の指定区分と、その物質に設定された管理条件をあわせて確認することが重要です。

3.毒性化学物質の4つの分類

台湾では、毒性化学物質をその特性に応じて第1類から第4類に分類しています。

分類 主な特徴 管理の考え方
第1類 難分解性・生物蓄積性など 環境中での残留や蓄積による影響
第2類 発がん性・生殖毒性など 長期的な健康影響
第3類 急性毒性 ばく露による急性的な健康影響
第4類 内分泌かく乱作用など その他の環境・健康影響

第1類は、環境中で分解されにくい、あるいは生物蓄積・生物濃縮などによって、環境や人体に影響を及ぼす物質です。

第2類は、発がん性、生殖能力への影響、催奇形性、遺伝子への影響など、慢性的な健康影響に関係する物質です。

第3類は、ばく露によって人の健康や生物の生命に急性的な影響を及ぼす物質です。

第4類は、内分泌かく乱作用などの特性を有する物質や、その他の環境・健康影響が懸念される物質です。

1つの物質が複数の分類に該当する場合もあるため、実務ではCAS登録番号などを基に対象物質を特定し、台湾環境部が公表する最新の指定内容を確認します。

4.規制対象物質はどのように確認する?

台湾環境部は、毒性化学物質および懸念化学物質を指定し、対象物質ごとに管理条件を定めています。

対象物質を確認する際には、主に次の情報を整理します。

  • 物質名・CAS登録番号
  • 製品中の含有濃度
  • 用途
  • 台湾での取扱数量
  • 製造・輸入・使用・貯蔵などの取扱行為

特に混合物では、製品を構成する各成分について規制該当性を確認することが重要です。

対象物質には「管理濃度(管制濃度)」が設定される場合があり、製品中の実際の含有濃度と照合して規制の適用関係を判断します。

また、対象物質の追加や管理条件の見直しも行われるため、最新の指定リストと個別の管理条件を組み合わせて確認することが基本となります。

5.台湾へ化学品を輸出する場合の確認事項

① 製品・成分情報

単一物質の場合は、物質名とCAS登録番号を確認します。混合物の場合には、各成分の名称、CAS登録番号、含有濃度などを整理します。

② 規制対象への該当性

各成分について、毒性化学物質または懸念化学物質として指定されているかを確認します。対象物質の場合は、分類、管理濃度、規制対象となる取扱行為などを確認します。

③ 輸入数量・用途

台湾での輸入量、使用量、貯蔵量、用途などを整理します。これらは、必要となる許認可や管理措置を判断するための基礎情報となります。

④ 台湾側の輸入者

台湾国内で輸入・使用・貯蔵などを行う事業者を確認し、それぞれに必要となる手続きを整理します。

⑤ 輸入・通関条件

対象となる税則番号や輸入規定を確認し、必要書類や通関手続きを整理します。

POINT
日本側で製品・成分情報を整理し、台湾側で輸入・取扱条件を確認することで、必要な対応と役割分担が明確になります。

6.許可・登録・承認の仕組み

TCCSCAでは、対象物質の分類、取扱行為、取扱数量などに応じて、許可・登録・承認の仕組みが設けられています。

対象物質 主な取扱行為・条件 基本となる手続き
第1~3類毒性化学物質 製造・輸入・販売 許可
第1~3類毒性化学物質 使用・貯蔵 登録
第1~3類毒性化学物質 一定数量未満の取扱い 承認
第4類毒性化学物質 対象となる取扱行為 承認
懸念化学物質 告示で指定された取扱行為 承認など

※個別物質の指定内容、取扱数量、用途、取扱行為などによって適用条件は異なります。

第1類から第3類の毒性化学物質については、製造・輸入・販売には許可、使用・貯蔵には登録という形で、取扱行為に応じた管理が行われます。

取扱数量が一定の基準を下回る場合には、承認による管理が適用されるケースがあります。

第4類毒性化学物質や懸念化学物質についても、対象となる取扱行為や告示条件に応じた手続きが定められています。

これらの申請は、原則として台湾国内で対象物質を取り扱う事業者が主体となります。日本企業は、成分情報、CAS登録番号、含有濃度、SDS、用途など、台湾側での手続きに必要となる情報を提供します。

7.「管理濃度」と「分級運作量」

台湾の制度では、対象物質の指定に加えて、濃度と取扱数量が重要な判断要素となります。

管理濃度(管制濃度)

対象物質を規制対象として管理する際の濃度基準です。混合物の場合には、指定物質の含有濃度を確認し、告示された管理濃度と照合します。

分級運作量

対象物質の取扱数量に応じて、必要となる管理措置を区分するための数量基準です。

第1類から第3類の毒性化学物質では、分級運作量との関係によって、許可・登録・承認などの適用が変わる場合があります。また、懸念化学物質についても、個別の告示によって数量基準が設定される場合があります。

実務上の確認順序

何が含まれているか(物質・CAS登録番号)
↓
どれだけ含まれているか(成分濃度)
↓
どれだけ取り扱うか(輸入量・使用量・貯蔵量)

8.SDS・表示・取扱記録・事故対応

対象となる毒性化学物質・懸念化学物質については、許認可に加えて、台湾国内での継続的な管理も行われます。

SDS・表示

対象物質や取扱条件に応じて、容器・包装・取扱場所などへの表示や、安全データシートの整備が必要となります。

取扱記録・申告

製造、輸入、販売、使用、貯蔵などの取扱状況について、記録の作成・保存や申告が求められる場合があります。

貯蔵・運送

対象物質の性質や取扱数量に応じて、貯蔵場所や運送方法などについて管理要件が設定されます。

事故予防・緊急対応

一定の対象物質や取扱数量については、事故予防・緊急対応計画、必要な設備、管理体制などが求められます。

台湾側の輸入者や使用者にとっては、輸入時の手続きから使用・貯蔵・運送までを一体として計画することが重要です。

9.台湾の化学物質登録制度との関係

台湾には、TCCSCAによる指定物質の管理とは別に、新規・既存化学物質の登録制度があります。

化学物質登録制度は、化学物質に関する情報を把握・評価するための仕組みです。一方、TCCSCAでは、指定された毒性化学物質・懸念化学物質について、輸入・使用・貯蔵などの取扱いを管理します。

項目 化学物質登録制度 毒性・懸念化学物質の取扱管理
主な目的 化学物質情報の把握・評価 指定物質のリスク管理
主な対象 登録対象となる新規・既存化学物質 指定された毒性・懸念化学物質
主な確認事項 物質区分、数量、登録条件 分類、濃度、数量、取扱行為
主な手続き 化学物質登録 許可・登録・承認など

台湾の「新化学物質及び既存化学物質資料登録弁法」では、登録制度の対象や適用条件が定められています。

また、台湾では環境部の登録制度に加えて、労働部が所管する新規化学物質の登録制度もあります。

POINT
台湾向け化学品については、対象物質の法的位置付けを確認したうえで、適用される登録制度とTCCSCA上の取扱管理を整理することが重要です。

10.輸入・通関上の確認

台湾への化学品輸出では、化学物質規制上の確認とあわせて、通関上の輸入条件も確認します。

台湾では、毒性化学物質・懸念化学物質に関連する輸出入管理として、輸入規定「553」や輸出規定「533」が設けられています。

対象となる税則番号や物質の規制状況によって、台湾側で確認や必要書類の提出などが求められる場合があります。

化学物質規制上の確認
対象物質、CAS登録番号、濃度、数量、用途、取扱行為、許認可など

通関上の確認
税則番号、輸入規定、必要書類、台湾側輸入者の手続きなど

これらを並行して進めることで、輸入手続きから台湾国内での取扱いまでをスムーズにつなげることができます。

11.日本企業が台湾輸出前に確認すべき実務フロー

台湾向け化学品輸出では、次の順序で確認すると全体像を整理しやすくなります。

STEP 1 製品・成分情報を整理する
製品名、用途、物質名、CAS登録番号、含有濃度などを確認します。

STEP 2 指定物質への該当性を確認する
毒性化学物質または懸念化学物質に該当するかを確認します。

STEP 3 管理濃度を確認する
対象物質の管理濃度と製品中の含有濃度を照合します。

STEP 4 数量・用途・取扱行為を確認する
輸入量、使用量、貯蔵量、用途などを整理します。

STEP 5 必要な許認可を確認する
台湾側の輸入者・取扱事業者に必要となる許可・登録・承認などを確認します。

STEP 6 化学物質登録制度との関係を確認する
対象物質の区分を踏まえ、関連する登録制度との適用関係を整理します。

STEP 7 輸入・通関条件を確認する
税則番号、輸入規定、必要書類などを確認します。

STEP 8 台湾国内での管理条件を確認する
SDS、表示、記録、使用、貯蔵、運送、事故対応などを確認します。

この流れに沿って情報を整理することで、日本側の輸出者と台湾側の輸入者が、それぞれ必要な対応を把握しやすくなります。

TICNOLOGY JAPAN VIEW

台湾の化学物質規制では、製品・成分情報を起点に、対象物質への該当性、管理濃度、取扱数量、許認可、輸入後の管理までを一連の流れとして確認することが重要です。

特に化学製品では、CAS登録番号、成分濃度、SDS、用途などの情報を整理し、台湾側の輸入者と共有することで、必要な手続きをより効率的に判断できます。

さらに、こうした情報を共通の製品情報として管理することで、台湾だけでなくEU、中国、韓国など、複数市場の化学物質規制への対応にも活用できます。

規制対応を市場ごとの個別手続きとして捉えるのではなく、グローバルな事業展開を支える製品情報管理へつなげていくことが重要です。

TICnology Japanでは、台湾向け化学品の規制調査から必要な試験・申請支援まで、案件に応じた対応方針の整理と適切なサービス提供先の選定をサポートします。

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参考資料

  1. 台湾 法務部 全国法規資料庫「毒性及關注化學物質管理法」
  2. 台湾 環境部「毒性及關注化學物質許可登記核可管理辦法」
  3. 台湾 環境部化学物質管理署「毒性化學物質相關資訊」
  4. 台湾 環境部化学物質管理署「關注化學物質相關資訊」
  5. 台湾 環境部化学物質管理署「列管毒性及關注化學物質查詢」
  6. 台湾 環境部「新化學物質及既有化學物質資料登錄辦法」
  7. 台湾 環境部化学物質管理署「輸出入規定『533』『553』相關作業」

情報基準日:2026年10月14日

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件に対する法的助言を構成するものではありません。実際の対応にあたっては、最新の法令、告示、対象物質の指定状況および個別の取引条件をご確認ください。

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