EU「PPWR」適用開始から2か月――欧州委員会が中小企業向けの新たな資料を公開【2026年10月】

EUの包装に関する新しい規則「PPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation/包装・包装廃棄物規則)」が、2026年8月12日に適用開始となってから約2か月が経過しました。

適用開始を迎えたことで、企業の対応も「PPWRとはどのような規則か」を理解する段階から、実際の製品や包装、販売方法に合わせて運用する段階へ移っています。

こうした中、欧州委員会は2026年10月19日、中小企業向けに「Packaging and Packaging Waste Regulation (PPWR) and small businesses: What do I need to know?(PPWRと中小企業:何を知っておく必要があるか)」という新たな資料を公開しました。

今回の資料では、包装の回収・リサイクルに関する責任、各国での登録や報告、小規模事業者の負担軽減など、PPWRの運用に関わる内容が整理されています。

なぜ、適用開始から約2か月が経過したこのタイミングで、新たな資料が公開されたのでしょうか。

今回は、欧州委員会が新たに公表した資料をもとに、PPWRの現在地と、企業がこれから確認しておきたいポイントを整理します。

1.なぜ今、新しい資料が公開されたのか

PPWRは2025年2月11日に発効し、2026年8月12日からEUで適用が始まりました。

一方、PPWRの要求事項はすべてが同時に始まる仕組みではなく、2026年から適用されるものに加え、2028年、2030年以降に段階的に適用されるものがあります。

企業では現在、自社が扱う包装について、適用される要求事項を確認し、実際の業務へ反映していく段階に入っています。

欧州委員会も、企業やEU加盟国がPPWRを運用するための情報として、ガイダンスやFAQなどを順次公表しています。

今回の中小企業向け資料も、その流れの中で公開されました。特に小規模な企業にとって実務上の負担となりやすい、登録、報告、包装廃棄物に関する費用負担などについて整理されています。

KEY POINT
PPWRは2026年8月から適用が始まり、現在は実際の運用段階に入っています。企業には、最新情報を確認しながら、自社の対応を継続的に見直していくことが求められます。

2.そもそもPPWRとは?

PPWRは、EUで流通する包装と包装廃棄物について定めた規則です。

従来の「包装・包装廃棄物指令(PPWD)」に代わり、EU全体で包装に関するルールを統一し、包装廃棄物の削減や資源循環を進めることを目的としています。

対象となるのは、商品を入れる箱や容器だけではありません。製品そのものを包む包装、個装、外箱、輸送用包装など、EU市場で使用される幅広い包装が関係します。

分野 主な内容
包装に含まれる物質 重金属や食品接触包装のPFASなどに関する要求
リサイクル リサイクルしやすい包装設計への移行
再生材 一部のプラスチック包装における再生材の使用
包装の削減 過剰包装や空きスペースの削減
表示 包装の材質や分別などに関する表示
再使用 一部の包装について再使用に関する目標を設定
回収・リサイクル 使用後の包装の回収やリサイクルに関する事業者の責任

PPWRは、「どのような包装を使用するか」から「使用後の包装をどのように回収・リサイクルするか」まで、包装のライフサイクル全体に関わる規則といえます。

そして今回、欧州委員会が中小企業向けに詳しく説明しているテーマの一つが、包装を市場に出した後の回収・リサイクルに関する責任です。

ここで重要になるのが「拡大生産者責任」です。

3.今回注目したい「拡大生産者責任」とは?

今回の資料で大きく取り上げられているのが、拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)です。

名称は少し難しく見えますが、考え方は比較的シンプルです。

商品を販売すると、使用された包装は最終的に廃棄物になります。そこで、包装を市場に出す事業者にも、使用後の包装の回収やリサイクルなどに必要な費用を負担してもらうという仕組みです。

企業では、包装の材質や含有物質だけでなく、どのEU加盟国で商品を販売するのか、誰がその国で包装に関する登録を行うのか、どのような報告が必要になるのか、回収やリサイクルに関する費用をどのように負担するのか、といった点も確認することになります。

PPWRへの対応は、包装そのものの仕様確認から、市場に出した後の管理までつながっています。

4.小規模事業者には負担を軽減する仕組みも

今回の欧州委員会の資料で、中小企業にとって注目したいのが、事業規模を考慮した仕組みです。

PPWRでは、あるEU加盟国で暦年に初めて市場に提供した包装などが年間10トン未満となる生産者について、報告する情報を簡素化する仕組みが設けられています。

また欧州委員会は、小規模な事業者について、登録などの行政手続き、記録管理、検査や監査などの負担を事業規模に応じて軽減できることを説明しています。

KEY POINT
年間10トンという基準は、小規模事業者の報告や事務負担を考えるうえで重要な基準の一つです。実際の対応については、販売するEU加盟国の制度とあわせて確認します。

5.なぜ「販売する国」の確認が必要なのか

PPWRはEU全体に適用される規則ですが、包装の回収やリサイクルに関する登録制度は、これまでEU加盟国ごとに運用されてきました。

そのため実務では、PPWRの共通ルールとあわせて、商品を販売する国で現在運用されている包装登録制度を確認する必要があります。

例えば複数のEU加盟国で商品を販売する企業では、「EU共通のPPWR要求事項」に加えて、「販売先となる各国の包装登録・回収制度」を確認していくことになります。

PPWRでは、こうした登録や報告の仕組みについてEU全体で共通化を進めることも予定されています。

企業としては、「EU共通で管理する情報」と「販売国ごとに確認する手続き」を分けて管理しておくと、今後の制度変更にも対応しやすくなります。

6.「認定代理人」についても見直しが進んでいる

今回の資料では、認定代理人(authorised representative)についても説明されています。

認定代理人とは、別のEU加盟国で包装に関する生産者責任を果たすために指定する現地の窓口です。

例えば、あるEU加盟国に所在する事業者が、別の加盟国へ包装された商品を直接販売する場合などに関係します。

この認定代理人については、小規模事業者の負担を軽減する観点から、欧州委員会が制度の見直しを提案しています。

現在、関連する法改正についてEUで検討が進められているため、複数のEU加盟国へ商品を販売する企業にとっては、今後の動向を確認しておきたい項目の一つです。

7.EUへ輸出する企業は、何を確認すべきか

日本をはじめEU域外から商品を輸出する企業にとっても、PPWRは重要な規則です。

EUへ商品を輸出すると、製品とともに包装もEU市場へ入ります。

まず、自社がどのような包装をEUへ出しているのかを整理します。製品包装、個装、外箱、輸送用包装というように、製品に使用している包装を洗い出します。

次に、それぞれの包装について、材質、重量、構成、用途、含有物質などの情報を整理します。

さらに確認したいのが商流です。誰がEUへ輸入するのか、誰が販売するのか、どの国で販売するのかによって、企業が確認すべき手続きや役割も変わります。

そのため、EU側の輸入者や販売者とも情報を共有し、「誰が何を担当するのか」を整理しておくことが重要です。

包装情報と商流をあわせて把握することで、自社で準備する情報、取引先に確認する事項、追加で必要となる対応を判断しやすくなります。

8.企業が今、確認しておきたいこと

PPWRはすでに運用が始まっています。

そのため、これから対応を始める企業だけでなく、すでに対応を進めている企業についても、現在の対応内容と最新情報を照らし合わせて確認することが重要です。

STEP 1 EU向け包装を把握する

製品包装、個装、外装、輸送包装などを整理します。

STEP 2 包装情報を確認する

材質、重量、構成部材、用途、含有物質などを確認します。

STEP 3 販売先と商流を確認する

販売するEU加盟国、輸入者、販売者などを確認します。

STEP 4 現在の対応状況を確認する

現在適用されている要求事項と、自社の対応状況を照合します。

STEP 5 販売国の制度を確認する

包装の登録、報告、回収・リサイクルに関する制度を確認します。

STEP 6 今後の変更を確認する

欧州委員会から公表される情報や、今後段階的に適用される要求事項を確認します。

重要なのは、一度対応して終わりにするのではなく、制度の動きを確認しながら、自社の対応を更新していくことです。

9.PPWRは「運用とモニタリング」のフェーズへ

PPWRは2026年8月に適用が始まり、すでに実際の運用段階に入っています。

一方で、今後段階的に適用される要求事項があり、欧州委員会からもガイダンスやFAQ、今回の中小企業向け資料など、実務に関する情報が継続して公表されています。

企業にとって重要になるのは、こうした動きを継続的に確認し、自社への影響を判断することです。

制度に変更や新しい情報があれば、自社の製品、包装、販売国、商流と照らし合わせ、現在の対応を変更する必要があるのかを確認します。

そして必要な場合には、取引先との役割分担を見直す、追加情報を収集する、試験や評価を行うなど、状況に応じた対応を選択します。

PPWRへの対応は、今後「何をすればよいか」を調べること以上に、最新情報を継続的に把握し、自社にとって必要な対応を判断していくことが重要になります。

TICNOLOGY JAPAN VIEW

PPWRは2026年8月に適用が始まり、企業の対応はすでに実際の運用段階に入っています。

これから重要になるのは、欧州委員会や各加盟国から公表される情報を継続的にモニタリングし、自社の製品、包装、販売国、商流への影響を確認していくことです。

そのうえで、現在の対応を継続するのか、追加の情報収集や試験・評価が必要なのか、取引先との役割分担を見直すのかなど、コスト、リスク、実務負担を踏まえて、自社にとって合理的な対応を判断していくことが重要です。

規制への対応方法は一つではありません。最新の制度動向と自社の状況を照らし合わせ、その時点で適切な対応を選択し、必要に応じて更新していくことが、PPWRを継続的に運用するうえで重要になります。

TICnology Japanでは、PPWRを含む各国の製品・環境規制について、最新動向の把握、自社への影響整理、対応方針の検討から、必要に応じた専門機関の選定まで、企業ごとの状況に応じた規制対応をサポートします。

参考資料

  1. European Commission(欧州委員会)「Packaging and Packaging Waste Regulation (PPWR) and small businesses: What do I need to know?(PPWRと中小企業:何を知っておく必要があるか)」
  2. European Commission(欧州委員会)「Extended Producer Responsibility for Packaging for Small Businesses(中小企業のための包装に関する拡大生産者責任)」
  3. European Commission(欧州委員会)「Guidance Document for Regulation (EU) 2025/40 on Packaging and Packaging Waste(包装・包装廃棄物規則に関するガイダンス文書)」
  4. Regulation (EU) 2025/40 on Packaging and Packaging Waste(包装・包装廃棄物規則)

情報基準日:2026年10月21日

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際のPPWR対応にあたっては、最新のEU法令、欧州委員会のガイダンス・FAQ、対象となる包装、商流、販売先となるEU加盟国の制度をご確認ください。

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